なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない [Kindle]

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (249ページ)

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり文章がすごく上手くて、読みやすくてユーモアがあって、心理学の学問的なことがらを、説明していると感じさせずにすごくわかりやすく説明してくれていて、あいまのちょっと幻想的というか童話のような文章も違和感がなくて、するすると読めた。
    この現実も生きる価値がある、みたいな希望を感じさせてくれるいい読後感だった。

    のだけど、でも、具体例として挙げられているミキさんタツヤさんの話が、結局、家庭環境や親との関係に問題があったっていうありがちな話みたいに思えてしまったり。
    あと、よく理解できたんだけれど、ふうん、そうだよね、で終わってしまうような、なんだかちょっと物足りなかったような気がしたのはなんでだろう。頭ではわかるけど…っていうことなんだろうか。なんか、ぱっと意識が変わるようなことを期待しすぎていたかもしれない。。。。

  • タイトルが1番素敵。内容は、わかりやすいがしゃらくさい。

  • タイトルがおしゃれだな。ただそれだけの理由で買ったが、ページを捲る手が止まらなくなった。臨床心理士の書いたセラピー本。
    直前に岡本太郎「自分の中に毒を持て」を読み感銘を受けたが、おそらく今の自分が、本書で言うところの「馬とジョッキー」のバランスがうまく取れていない状態だったので刺さったのだろう。
    今まで生きてきて愛読書と呼べる本が見つからなかったが、ようやく、これから先、何度も読み返すであろう本に出会えた。

  • やさしい語りかけ口調プラス例がふんだんに使われていて、自分の身近なものに感じやすく、追体験ができた。自分も、ミキさんやタツヤさんの事例に思い当たる節があり、ああ確かになとなることが多かった。ミキさんがPDCAサイクルから抜け出せたのは、SNSで仲間と繋がれたことが大きいと思う。つまり結局のところ人間関係を広げておくのが1番で、でもある特定の人に依存しすぎるのはよくないんだなと思った。
    ファストフードなどがそうであるように、今はなんでも「速い」が1番良いとされている時代だけど、心の悩みは考えに考えて時間をじっくりと考えた方がいいとわかった。ネガティブがもたらすよいこともあることを大事にしようと思う。

  • ちょっと圧倒的だった。読書というより、本当に臨床カウンセリングを受けたかのような衝撃。心に補助線を引いていく、未知の体験。過去に傷つけてしまった人と、記憶のなかで、逃げずに向き合わざるを得なかった。複雑な人生を、複雑なまま生きることへの勇気をもらった。

  • ふむ

  • 読みやすかったが、正直なぜここまで評価が高いのかがわからなかった。
    それほど今悩みがないから、刺さらなかったのだろうか。
    働くことと愛することの補助線は大切にしたい。

  • これはいい本だと思った。言葉の表現がとても上手。文章が固すぎず柔らかすぎず、なんだかちょうどいい。私の妻はまえがきを読んで泣いてしまった。それは感受性が強すぎると思いつつも、わからなくはないと思った。なんだか心にうまく入ってくる文章なのだ。

    東畑さんについてネットで少し調べてみると、21世紀の河合隼雄だという人がいた。同じユング系の心理学者であるという点を差し引いても、心理学をベースにしながらも、我々一般人に刺さる言葉や物語をすっと提示できるという点で、確かにそうだなと思った。

    最初に提示された補助線である、「馬」と「ジョッキー」は、自分の心の中を客観的に理解しようとするときの最初の方法として、とても便利だ。

  • ■キーメッセージ

    心理学の前提にあるのは、心が複数であること。心理学の理論は、心をさまざまな概念で切り分けている。

    よって心理学とは補助線の学問。心が複数のプレイヤーから成り立っていることを明らかにし、それらがどのような関係にあるのかを解き明かす学問。

    **~印象に残った3つのポイント~**

    ①カウンセリングには2つのフェイズがある。ひとつめが「マネジメント」:混乱した状態から安全な港まで避難する段階。ふたつめが「セラピー」:安全な港から出て、夜の海へと漕ぎ出す段階。クライエントは暗中模索しながら自分なりの人生の目的地を探すことになる。

    ②昔は大船で生活をしていたが、時代を経る中で人々は小舟で航海するようになってきた。最初に小舟になることを望んだのは自由になりたいことを望んだ少数の人達だけだったが、今では望むと望まざるとにかかわらず、誰もが小舟で社会に放り出されるようになってしまった。

    ③「自立とは依存先を増やすこと」小児科医で脳性麻痺当事者の熊谷晋一郎さんのエピソード

    東日本大震災のとき、車いすの熊谷さんはエレベーターが止まって外に出られなくなった。他の人達は階段やはしごなど他の手段で逃げられた。この経験から熊谷さんは、障害者が「依存」的であるのは、依存先が限られているからであり、健常者が自立しているようにみえるのは、依存先が大量にあるから。したがって「自立とは依存先を増やすこと」と考えるようになった。

    ■感想

    心理士、カウンセラーとしての日常の臨床体験が生々しいことばで語られており、カウンセリングとはいかなるものかという一端を垣間見ることができる。P77から始まる「ミキ」さんの事例を通して、緊急避難が必要なときはまず避難をさせ、その後に向き合いながら解決に導いていくプロセスが必要であることを教えてくれる。そして、もっとも重要なことは相手への興味であり、すべての出発点であると感じた。

  • 何かあると読む本で、また再読してしまいました。

    >馬とジョッキー
    馬とは僕らの傷ついている部分でした。心にはなかなかふさがらない傷口があって、そこには痛みがあります。馬は痛みに突き動かされています。その痛みを誰かに何とかしてもらおうとする。
    そう、馬は他者を求めます。「馬が合う」という言葉があるように、人と人を結びつけるのは、ジョッキーの強さではなく、馬の弱さです。

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著者プロフィール

1983年東京生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)・臨床心理士。専門は、臨床心理学・精神分析・医療人類学。白金高輪カウンセリングルーム主宰。著書に『野の医者は笑う―心の治療とは何か?』(誠信書房)『居るのはつらいよ―ケアとセラピーについての覚書』(医学書院)『心はどこへ消えた?』(文藝春秋 2021)『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』(新潮社)など。『居るのはつらいよ』で第19回(2019年)大佛次郎論壇賞受賞、紀伊國屋じんぶん大賞2020受賞。

「2022年 『聞く技術 聞いてもらう技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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