- Amazon.co.jp ・電子書籍 (203ページ)
感想・レビュー・書評
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この本は、「現代思想(ポスト構造主義)」について、わかりやすく解説された本ですが、私にはなかなか難しく、なかなか理解できませんでしが、とても魅力ある本でした。
哲学を丁寧にわかりやすく解説できる著者の知識に感心しました。
「実存主義」から「構造主義」そして「ポスト構造主義(ポストモダン)」の後、「ポスト・ポスト構造主義?」という位置付けの現代の哲学者が、現在、何のテーマについて考えているか?なども解説されており、ちょと哲学にも興味が出ました。
この本がベストセラーになった!というのもいいですねー。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「入門のための入門」を標榜する現代思想入門書。主に「1960年代から90年代を中心に、主にフランスで展開された「ポスト構造主義」の哲学」を対象としている。全七章に「現代思想の読み方」が付属して約230ページの新書。
本書の核として扱われる思想家はデリダ、ドゥルーズ、フーコーの三人で、三章までがそれぞれに充てられている。名前は知っていても難解なイメージが先行して手を出しづらい思想家たちの思考の特徴をそれぞれ、「概念の脱構築」「存在の脱構築」「社会の脱構築」と定義し、初心者でも理解しやすい範疇でわかりやすく大枠を伝える。本書の主役にあたるこれら三人の思想家については、後につづく章でもたびたび登場する。
第四章では現代思想の源流としての、ニーチェ、フロイト、マルクス(さらにショーペンハウアー)を取り上げる。「秩序の外部、あるいは非理性的なもの」にはじめて着目した思想家として、現代思想の基本的なコンセプトの原型として理解できる。第五章は、第四章と三章までの前後をつなぐような意味合いで、主にラカンの精神分析の概要を解説する。
「現代思想のつくり方」という一風変わったアプローチの第六章は、現代思想の4つの原則を提示し、これまでの振り返りと、続く第七章の予習を兼ねる。第七章ではエピローグ的に「現代思想」のその後、として「ポスト・ポスト構造主義」を紹介する。巻末の付録では「現代思想の読み方」として、「現代思想を読むための四つのポイント」を挙げる。そのうえで実際にドゥルーズとデリダの文章を引用して、ポイントを踏まえての読み方を検証する。第六章以降は、本書全体のなかでは補足的な役割を担う。
身近な例もふんだんに交えた丁寧な説明で、難解でとっつきにくい印象の強い現代思想への興味を損なうことなく導入してくれる。わかりやすさへの工夫と並んで特徴的なのが、本文中でたびたび紹介される、それぞれの思想家や思考法にまつわる入門書を中心とした関連書籍の豊富さだ。「入門書のための入門書」と宣言するだけあって、本書をきっかけに読み手がそれぞれの興味に従って次に進むための配慮がなされている。かつ、付録の「現代思想の読み方」は一種の読書論として、読書の基本姿勢について有用なアドバイスを与えてくれる。
上記のように読み手への心遣いが非常に手厚い入門書となっており、とくに入門を謳いながらもかなりの知識を要求するケースも珍しくない哲学・思想関連の読み物にあっては異例ではないだろうか。それだけではなく、現代思想を学ぶことが、「複雑なことを単純化しないで考えられる」ようになり、生きていくうえでの指針を与えてくれるというメッセージも、学習のモチベーションや知的な好奇心をかきたててくれる。様々な観点から読み手に寄り添うことに徹した良書だと思える。 -
哲学者・千葉雅也氏による”現代思想”入門。
とはいえいわゆる、ミシェル・フーコー、ジル・ドゥルーズ、ジャック・デリダに代表される現代思想の著作はもはや古典といってもいい(ジャック・デリダは2000年代はじめに亡くなっている)。
彼らの哲学は「ポスト構造主義」といって一括りにされることが多いが本書はそのポスト構造主義の巨頭3人の思想を核として書かれている(ちなみに著者の専門はジル・ドゥルーズ)。
本書を俯瞰すると、
第1〜3章までがフーコー・ドゥルーズ・デリダの基本的な解説。
第4章で、彼らの哲学形成に影響を与えたニーチェ、マルクス、フロイトの概説。
第5章は、フロイトの流れをくむ精神分析家ジャック・ラカンについて。彼の思想に対する距離の取り方が、フーコー・ドゥルーズ・デリダの哲学にも反映されていることを示唆。
ここで「否定神学批判」(+東浩紀『存在論的、郵便的』への言及)という重要なワードが説明され、
第6、7章では、フーコー・ドゥルーズ・デリダを批判継承した「ポスト・ポスト構造主義」(なんてややこしい!)の哲学者たちを紹介(マラブー、メイヤスー 、ハーマンとか)。
さらに、否定神学批判に対するよりつっこんだ議論あり。上の三者の思想が図式化されもするが私はこれにいちばんびっくりした。
おまけになんと付録で、ドゥルーズやデリダの厄介なテクストを具体的に引用しながら、読み方のコツまで伝授してくれている、まさに至れり尽くせり。自分が哲学書を読み始めた頃に本書があればどれだけよかったか。なんかテレフォン・ショッピングみたいになってきた(今もあるのかな?)。
のみならず、本書のタイトルは、アクチュアルな、”いまにつながる”思想という意味での”現代思想”入門でもある。
ちょっと言い方がよくないかもしれないけれど、巷にあふれているそんじょそこらの自己啓発書よりも、よほど優れた自己啓発書だと思う。
ひとつは、「二項対立(わかりやすい例でいえば「善と悪」とか)にとらわれない!実践的思考メソッド」が紹介されていると言い換えることもできる。
(これを突き詰めて行くと、「ほっといてくれ!」の思想になるという解釈であってるかな)
もうひとつは、「できる限り悩まない!新たな世俗性を生きる」という人生論。悩みという近代的ドツボにはまらないライフハック。ここは千葉氏の『勉強の哲学』と合わせて読みたいところ。(また『動きすぎてはいけない』で展開されたアイロニー/ユーモア論への理解が深まってよかった)
ここめちゃくちゃ重要だし参考にしたいと思った。
とくに、「第3章 フーコー 社会の脱構築」の「新たなる古代人になること」、それから「第7章 ポスト・ポスト構造主義」の「世俗性の新たな深さ」のくだりは必読。再読するつもり。
というわけでフーコー・ドゥルーズ・デリダなどの著作を読むきなんてさらさらない、という人にとってもきっと多くの発見があるだろう本だ。 -
とりあえず読み終わったദ്ദി ˃ ᵕ ˂ )
理解出来たかと言われるとうつむいてしまうけど。
取っ掛りにはなる。離れたくはないところだが、自分の言葉では語れない。
こういう事を考える人達の名前や存在を知れてよかった。今はそこまで。もっと早く読めばよかった。 -
Audible でラン中に聴取。自分が本を「聴いて」読むことに慣れてきたせいかもしれないが、本書は相当に聴きやすい。読まれることよりもむしろ聴かれることが前提となっているのではないか。おそらく大学等での講義録を基にして書き起こされたものなのだろう。テーマ自体は難解な思想を扱うものだが、工夫に富んだ精緻な再整理によって、驚くほど理解しやすいものになっている。ちょっと混みいっている本だと何度も聴き返せさねばならずランニング中には適さないが、本書は良質なパラフレーズが多用されており、多少の聴き逃しがあってもついていけるのが良い。
「二項対立の脱構築」を中心軸としてデリダ、ドゥルーズ、フーコーを取り上げ、さらにその源流としてのニーチェ、フロイト、マルクスとラカンらの精神分析に遡っていくことで本書のテーマである「秩序と逸脱」にアプローチしていく。その後のコンテンポラリーな思想になると議論が入り組んできて理解しにくい所もあるが、全体の構成のわかりやすさが語り口の柔らかさと相俟って、すんなりと頭に入ってくる。本書で紹介される思想家たちの哲学に直に触れようと思うと相当な覚悟がいるのだと思うが、著者のような優れた媒介者のフィルターを通してそのエッセンスに気軽に触れられるというのは、我々のような一般市民にとって本当に幸運なことだと思う。 -
難しい現代思想を“分かりやすい言葉で説明してくれているから読んで良かった。あとはどれだけ、曖昧な知識を確かなものにするかということと、この哲学者たちの世の中の捉え方に触れて馴染んでいくかということになりそうだ。そういった意味では、千葉雅也さんの功績は大きい。これは自分に限ったことではなく、多くの読者がそう思ったに違いない。
ただ、そう遠くないときにもう一度千葉雅也さんの著書に触れないと、もう二度とこの世界に足を踏み入れることは無くなるだろう。 -
現代思想として前半は、デリダ、ドゥルーズ、フーコーの3人を取り上げ、脱構築(二項対立からの逸脱)を解説。後半は一旦ニーチェ、フロイト、マルクス、(カント)を振り返りながら、さらに精神分析と現代思想をラカン、ルジャンドルを取り上げながら解説。最後には現代思想の作り方として、排除されている他者性の発見、超越論的前提の設定、極端化、反常識を考えることを紹介。ポストポスト構造主義あたりはかなり難しいのですが、ハーマンのオブジェクト指向やラリュエルの非哲学を紹介。
構造主義は西洋白人中心主的な歴史の発展性に疑問を投じた功績はあるものの、構造的な見方をした場合、責任が生じにくいため、主体性が相対的に低くなるという課題があったと考える。脱構築では、構造主義の相対主義的な要素は受け継ぎつつ、二項対立や秩序の外側へ逃走線を引き、他者性を排除しない前提を立てていく姿勢を感じた。
現代思想に触れることで、秩序を強化する動きを警戒し、秩序からズレるもの、差異に注目でき、複雑なものごとをより高い解像度で理解できるようになれるとのこと。確かに難しくはあったが、物事のとらえ方の参考になる考えはたくさんちりばめられていた。完全に消化は仕切れないが、問いや疑問が生じたため、次の哲学の扉を開けるキッカケになる本だと思います。 -
哲学や思想の中でも、現代思想に特化しているのがこの本。哲学者たちの超読みにくい書物の概要と要点を、時代背景やその系譜などを踏まえて、かみくだいた言葉で説明してくれる本です。
代表的な人物や思想はもちろん、私たちが生きる現代にまでその思想の流れが含まれるのも特徴。
新書でわかりやすいながらも、読み応えはばっちりなので、長期休みやまとまった移動時間などに腰を据えて読むことをオススメします。 -
ここ数年哲学に関する本を手に取ってきたが、いかんせん内容を把握することに困難な状況に陥る事が多々ありました。そんな所へ本書の登場ということで購入。中途半端な知識を持ちつつ読んだけれど「ああ、あれってこう言う事だったのね」と腑に落ちる場面も多く、楽しみながら読めました。特に付録の現代思想の読み方は今後哲学書を読む上で大変参考になったのでした。
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冒頭から丁寧で面白い。
現代社会の風潮、自分の生き方、考え方についても考えさせられる。