ウクライナ危機後の世界 (宝島社新書) [Kindle]

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  • ウクライナ危機に関して、戦争を仕掛けたロシア・プーチン側の考え方と、この危機が世界にもたらす意味を、7人の識者(うち1人は無名のべリングキャットの中の人)が語っている。

    戦争が始まって約3か月の5月時点で書かれているため、戦争開始当初の混乱も収まり、各識者が冷静に状況を分析して語っているため、非常に参考になる内容が多い。

    特に興味深かったのが、第5章のラリーダイアモンド氏の以下の指摘。

    「このように民主主義というものは、人々がそれを達成するために必死に努力をしなければならず、時にはそれを維持するために多くの犠牲すら払わなければなりません。そのような絶えざる民主主義に対する配慮がなければ、ロシアのような権威主義国のシャープパワー的介入による腐敗によって、簡単に崩壊しかねないほど脆いものなのです。」

    日本において、民主主義を守るというと、政治家や官僚等の権力の不正を、命の危険等を全く感じることなく、安全な立場から言論(デモ等を含む。)で追及することが、ここ数10年ではほぼ全てだった。

    こういったことが重要でないとは言わない。しかし、今回のウクライナ危機によって明らかとなったことは、民主主義の本当の敵は、プーチンのような、自らの権力を維持するためには、暴力の行使を全くいとわない権威主義者達である、ということである。

    そういった権威主義者達は、今回のウクライナ危機のようないわゆる従来型の戦争であったり、あるいはロシアによるアメリカ大統領選への介入のような、サイバー的な手法を用いた民主主義のシステムの脆弱性をついた攻撃であったりによって、自らの権力を危うくしうる民主主義を攻撃する可能性が常にある。

    言論で非難するだけではどうにもならない相手に対して、我々は我々の民主主義を守らなければならない。

    これが今回のウクライナ危機が我々の前に叩きつけた課題である。

    日本が取り組むべきは、いわゆる軍事的な防衛力の話だけでなく、サイバーによるインフラや情報空間の防護、多国間での安全保障や経済的な協力関係、エネルギー確保の枠組みの構築等々、幅広い分野に及ぶ。

    一見民主主義とは関係ないことのように見えても、民主主義に介入しようとしてくる勢力をはねのけるためには、経済面、生活面、技術面等々諸々をケアし、言論が力を持てるような状況をまずは作り出さなければならない。

    ウクライナ危機がもたらした課題はかくも大きい。
    このような認識を得られただけでも、本書を購入した意義は大きかったと思う。

  • 賞味期限早めの話題が多い。とはいえハンナアーレント賞受賞している歴史学者ティモシー・スナイダー氏の話(永遠の歴史)などは面白い。

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著者プロフィール

歴史学者、哲学者。1976年イスラエル生まれ。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻し博士号を取得。現在、ヘブライ大学で歴史学を教授。『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21 Lessons』。

「2020年 『「サピエンス全史」「ホモ・デウス」期間限定特装セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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