聞く技術 聞いてもらう技術 (ちくま新書) [Kindle]

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  • 筑摩書房
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感想・レビュー・書評

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  • 「聞いてもらう技術」は「うまくしゃべる技術」ではありません。(P123)

    ・・あ、てっきりそういう、ビジネススキル本だと思って順番待ちしてました。。。

    ということで、冒頭こそビックリしたものの、結果的には読んで良かったです。
    何というか、優しさにあふれた本でした。
    読むだけで癒されます。

    真夏に麦茶を飲んだら体にじわっと沁み渡り「あぁ私、水分不足だったんだ」と気付くように、この本を読んだら「あぁ私、優しさに飢えてたんだ」と気付く、みたいなそんな感じ。

    多くの人がそんな感覚になるから、ベストセラーなんでしょうね。


    著者はカウンセラーさんなんですね。(初読み)
    職業適性のマトリクスで「人⇔物」みたいな軸がありますが、カウンセラーさんや保育士さんみたいな「人」寄りの職業の方と接して思うのは、本当に人が好きなんだなぁ、人という存在を愛してやまないんだなぁということ。
    (もちろん個人や状況によるのでしょうけど)
    その愛が文章からあふれ出ているから、ホイミ効果があるんでしょうね。

    私の適性は多分「物」寄りで、仕事も「物」。
    その事に不満はないし、それなりに楽しくやってはいるけれど、でも時々漠然と「何か消耗してるよなぁ」と思ったりはします。
    その「すり減ってる何か」がこの本の言うような「つながり」や「優しさ」みたいなものなのかな。

    答えは出ないけど、とりあえず、しんどい時は東畑さんの本で癒されようと思いました。

  • 「〜小手先編〜」が結構あって、では本質は?
    と探すように後半を読んでいく。
    「世間知」「専門知」を適用する範囲と段階についての話、理由や傷まで知らない(伝えない、聞かない)限りはじまらない。読んでいるうちに「この本を読んで意識した人同士でないと駄目なのかな?」とか…
    聞いてもらう、聞く技術が小手先になる理由は、魔法のように一括で解決するものではなく現実的な小さな解を一緒に見つけていくしかないとか、わかるようでぼんやりしてきて再読しないとダメかもしれない。

  • 臨床心理士である著者が自らの職業的な見地をもとに、「聞く」「聞いてもらう」にスポットを当てて書かれたエッセイ。大きく社会季評と実用的な観点というふたつの要素からなる。全4章に「聞く技術 小手先編」「聞いてもらう技術 小手先編」を加えた構成。各省冒頭は自らが朝日新聞に寄稿した時評的な文章の引用から始まる。約240ページ。

    「聞く技術」をテーマにしたハウトゥー、自己啓発系の書籍は珍しくないが、本書はその点をベースに出立する。著者曰く、世に多くある「聞く技術」関連著書の主張は「余計なことを言わずに適切な質問をしよう」に尽きる。この結論には著者自身も異論はないものの、結局は「程度の問題」という不毛な着地点に落ち着いてしまう。そしてこの結論に関するさらに重要なポイントは、「そもそもなぜ聞くことができなくなるのか」という問題自体が意識されないことにある。本書はこのような「聞く技術」本の本質的な欠陥を補うことを課題として興されている。

    「聞く」「聞いてもらう」をテーマに据えた本書に興味をもつような私たちがその先に何を見ているかを著者は見通している。それは「孤独」「孤立」の問題である。「聞く」編にあたる第1、2章ではここ20年で深刻化した新自由主義による社会の分断に焦点をあてて、メンタルヘルスの本質である「つながり」の必要性を説く。本書では「孤独」「
    孤立」は明確に腑分けされており、簡単に言えば「孤独」は豊かさ、「孤立」は解決されるべき問題として捉えられる。

    ただし、ここまでの前半だけを見るなら本書はさほど特徴のある内容を備えていない。新自由主義による個々人の分断や孤立化は多くの論者によって指摘されているところであり、「聞く」技術の重要性も先に述べたように関連書籍だけでもかなり充実している。

    おそらく本書の肝は後半の「聞いてもらう」技術にこそあると言ってよいだろう。そもそも「聞いてもらう」技術という言葉自体が違和感を喚起する不思議なフレーズである。この「聞いてもらう」の部分を換言するならば、それは「弱さを見せる」「甘える」「友達や仲間をつくる」といったことに相当する。

    それではなぜ「聞く」に並んで「聞いてもらう」が重要になるのか。それは、人々の孤立を助けて癒やすためには、「聞く」ことに特化した専門家の力だけでは社会全体の孤立の問題を解決することが不可能だからだ。人は一方的に聞き続けるという立場だけに留まることはできないし、すべての人がカウンセラーのような専門家にかかるという状況も現実的ではない。結局は市井の人々の間での助け合いが必要となる。人はあるときには他人の手助けをすることもできるし、人の手を借りなくてはいけない。だからこそ、「聞く」と「聞いてもらう」がグルグルと循環させることこそが全体として必要になる。現在、とくにフィーチャーされているのは「聞く」側面だが、これはいわば車の片輪のみであって、長期にわたって構造的に機能することはない。だからこそ、皆が自らの弱みを見せて人に「聞いてもらう」技術が、「聞く」技術とともに必ず必要になる。著者は小さな「聞く」技術ブームに潜む構造的な欠陥に気づいたうえで、もうひとつの必須の要素を提案しているのである。「聞く」技術が多く求められているということは、すなわち「聞いてもらう」技術も同等に必要とされていなければおかしい。

    書名だけを見ればハウトゥー本寄りに見えるし、実際に「聞く」「聞かれる」技術の小手先編も提示されている。ただし、本書の本質は具体的な提案よりは社会季評を軸にしたエッセイだと思える。ハウトゥーの実例も正直なところそこまで充実しているわけではなく、実践への期待にウェイトを置いた読者にとってはやや肩すかしかもしれない。

    最近ハイペースで著作が出版されている世間的にも注目度の高い著者で、相変わらずの読みやすさと、「聞く」問題への構造的な欠陥への慧眼など、納得できる点は十分にある。ただ、実用の看板を前面に出しながらの実践方面の弱さや、著者の他の一部作品のクオリティと比較からすれば少し物足りず、即席の感は残る。

  • 「聞く」と「聞いてもらう」は世の中を循環している。
    最近の自分にも全く理不尽な事があり、相手の方は一切自分の話を聞いてもらえなかった。それを第3者に相談した時に、やっぱり自分だけが悪いわけじゃないよねと納得した出来事があった。そうやって誰かに聞いてもらう事は大事であり、自分も相手の聞いてほしい事に耳を傾けられる第3者になりたいなと思う。
    とても私自身ためになった一冊。

    • yyさん
      snow108さん、こんにちは。

      なんか、snowさんにすごく共感!
      実は、私も少し前に どうしても納得のいかないことがありました。...
      snow108さん、こんにちは。

      なんか、snowさんにすごく共感!
      実は、私も少し前に どうしても納得のいかないことがありました。
      説明すれば分かってもらえる 明らかな誤解をされたままシャットアウト!
      これまでの人生になかったほどのショックでした。
      でもね、その方のことを関係者に話すと
      悪口にも聞こえかねないので悶々………。
      で、全く関係のない娘にブワー~ッと話してスッキリしました。

      snowさんのおっしゃるように、
      ”取りあえず相手の話を聞く”って姿勢、すごく大切だと思います。
      ね♪☆彡
      2023/08/10
    • snow108さん
      yyさん、コメントありがとうございます、
      同じような経験をされたんですね。誰かに聞いてもらう事で、解決はしないけれど心が軽くなることはありま...
      yyさん、コメントありがとうございます、
      同じような経験をされたんですね。誰かに聞いてもらう事で、解決はしないけれど心が軽くなることはありますよね。この本はいろいろ納得させられた本でした。
      2023/08/10
  • 要は、ちょっと大丈夫じゃなさそうな人がいたら、「なにかあった?」とか聞いてあげよう、自分もちょっと大丈夫じゃないかもと思ったらシグナルを出して聞いてもらおう、ってことなんだけど、説明がうまくて笑えて、わかりやすくて素直にきけて納得がいってよかった。ほんとうにそうだなって、けっこう感動すら覚えるような。

    やっぱり「聞く」「聞いてもらう」は、直接会って、っていうのが必要な気はした。ネット上とかメールとかだとお互いスルーしてしまいがち。。。

  • ◯ あなたが話を聞けないのは、あなたの話を聞いてもらっていないからです。(9p)

    ◯ 子どもが大人になれるのは、「環境としての母親」がときどき失敗するからです。(63p)

    ◯ 苦境にあるとき、誰かが話を聞いてくれる。不安に飲み込まれ、絶望し、混乱しているときに、その苦悩を誰かが知ってくれて、心配してくれる。ただそれだけのことが、心にちからを与えてくれる。(242p)

    ★お互いに話をしよう。当たり前のようで、忘れてしまいがちなことを思い出させてくれる本。

  • とても優しい本だった。
    タイトルからして、いかにもハウツーものを想像しがちだが、そうではない。
    以下、要点を取り出しながら、自分の考えをまとめていきたい。

    〇心の欠乏を埋めるには、「聞く」ことが大切。
    でも、欠乏している人にとって、他者は皆敵に思える。
    なぜなら、誰も話を聞いてくれないから。
    「孤独に介入しようとすると、人は孤独になる」
    さらに、当事者であればあるほど、話を聞くのは難しくなる。そこには利害が生じてしまうからだ。

    〇話を聞ける関係になるためには、「時間をかけること」が必要。
    「人間的に見守られる時間は、少しずつ心を修復してくれます」

    〇人の話を聞くためには、人に話を聞いてもらうことが大切。当事者ではない、第三者に話を聞いてもらおう。

    以上が要点。
    どれも共感できる内容だった。
    過去に一番キツい職場で働いていたが、その時は誰にも相談をできなかった。
    単純に時間がなさ過ぎた。
    時間がないことには話を聞くどころか、聞いてもらうことなどとてもできない。
    本の中では、他者が敵になるというが、自分の場合は自分が敵というか、とにかく自己否定感にばかりとらわれていたように思う。
    反対に、キツいところでも話を聞いてもらえるとなんとか続けることができた。
    友人には感謝だな…と改めて思う。

    話を聞くためには話を聞いてもらうというのも共感をもった。
    福祉現場で支援員として働いていたが、支援する側が支援されないと、いい支援なんてとてもできない。
    でも、現場では問題が常に起こり、現実に対処するので精一杯だった。
    今思うと問題ばかり起こす人も、欠乏から怯えていたのかもな…と思う。

    最近、家族間の仲立ちをすることがあったが、自分が第三者となって介入することもそれなりに意味があったのかもしれない。
    ただ、当事者でもあるので、完全に中立といかないのも辛いところである。
    職場でもひたすら愚痴をこぼす方がいるのだけれど、皆第三者がいないのかも…孤立しているのかも…と感じた。

    かくいう自分も愚痴をこぼすことはあるわけで、「聞く」と「聞いてもらう」を車輪のようにまわしていこうと思った。

    その時に、批評やアドバイスはなるべく控えたい。
    疲れてきたり、どうしても共感できなかったりすると自分の意見を挟みがちになる。
    でもなぁ、共感できないものはしゃあないやん、というところでやはり人の話を聞くのは難しいな、と考えた。

    最後に、一番印象に残った言葉を。
    「心にとって真の痛みは、世界に誰も自分のことをわかってくれる人がいないことです」

    はけ口がどこにもない人へ。
    人から愚痴ばかり聞かされて辛い人へ。
    孤独(孤立)を感じている人へ。
    孤立を感じる人を助けたい人へ。

    お勧めです。

  • 「『聞く』は語られていることを言葉通りに受け止めること。『聴く』は語られていることの裏にある気持ちに触れること」

    「孤独には『安心感』が、孤立には『不安感』がある」

    毎度のことながら、東畑さんの本にはハッとさせられる新しい気づきがある。

  • ▼おすすめ度:★★★★☆
    傷付きや孤独感を経験したことがある人にはぜひ読んでほしい。
    でもそこにピンとこない人はいまいちかもしれない。

    ▼所感3つ
    ・「聞いてもらう技術」=「ひととつながる技術」な気がする。そしてそれはテクニカルに、要点を相手に伝えるのではなく、今自分が困難さや傷付きを抱えていることに気付いてもらうためのtipsである。
    ・「なぜひとの話を聞けなくなるのか?」という視点もよかった。人の話が容易く聞けない=自分が何か別の問題を抱えてる、という気付きになりそう。
    ・昔他者に依存することを怖がっていたけど、それは助けを求めた時に拒否され続けたが故のトラウマだったんだなぁ(みつを)

  • 理解しようとするほうが、愛を機能させるためには役に立つ

    恋愛は歩み寄り、認め合い、わかり合おうとすること。と有村架純がいつかの新聞コラムで答えていた。正しく、恋も愛も理解しようとする事が、最も有効的な手段であり、それを機能させると感じる

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著者プロフィール

1983年東京生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)・臨床心理士。専門は、臨床心理学・精神分析・医療人類学。白金高輪カウンセリングルーム主宰。著書に『野の医者は笑う―心の治療とは何か?』(誠信書房)『居るのはつらいよ―ケアとセラピーについての覚書』(医学書院)『心はどこへ消えた?』(文藝春秋 2021)『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』(新潮社)など。『居るのはつらいよ』で第19回(2019年)大佛次郎論壇賞受賞、紀伊國屋じんぶん大賞2020受賞。

「2022年 『聞く技術 聞いてもらう技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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