- Amazon.co.jp ・電子書籍 (571ページ)
感想・レビュー・書評
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初の川上作品。著者の意図がどこにあるのか?601ページにぎっしりと文字が詰まった読み応えのある作品。
あるひとつの「取り返しのつかない何か」にジリジリと向かっていく様を傍観しているはずなのに、いつの間にか自分自身も物語の中に引きずり込まれています。戻る為に神経を衰弱するので一度に沢山読めません。
所持してるだけで「鬱」になりそうなくらい存在感のある本です。 -
引き込まれて一気に読みました。
90年代にこのようなことが本当にあったのかもと思ってしまう勢いがありました。
みんな、今の現状をなんとかしたかっただけ。幸せになりたかっただけ。普通に生きたかっただけ。
ただ、現状をなんとかするための手段や選択肢は少ない。そしてそのためにはお金が必要。
幸せになりたいけど、目の前の現実が過酷すぎて何が幸せかがあやふやになってしまう。そしてそのためにはお金が必要。
普通に生きたくても子どもの頃の環境の影響などで普通がわからない。そしてそのためにはお金が必要。
登場人物は全員めちゃくちゃなのですが、生きることに懸命で悲しく、嫌いになれない。どこか「あぁ。そうだよね」と共感してしまう。反面、それぞれになにかスッキリしないドロッとしたものを感じてしまう。
でも、読後にはなぜかみんな愛おしいと思ってしまう。
この話を登場人物それぞれの視点で読んでみたいです。 -
水商売のシングルマザーに育てられた女性、花が主人公。
15歳で家を出て、母親の友だちや知り合った女の子とスナックをやって一緒に暮らしはじめ、やがて犯罪に手を出していく・・・という話。
お金=幸せではないけれど、幸せの土台はお金がある程度あることだなと考えさせられました。
主人公の花は賢く行動力もあるのに、お金がないのとお金がある家に育たなかった為知識がなく、将来のことを考えられず、いつもどこか不利な選択をしてしまう。
そして、他の3人は花ほど賢くないので、そんなに将来に不安を持たないで過ごせるが、花は賢いので一人で色々考えてしまうのがかわいそうでした・・・。
ラストに黄見子さんに会いに行き、「一緒に暮らそう」と誘った瞬間、私は「花ちゃん、昔と同じ状況になるよ!」とアドバイスしたくなりました。
黄見子さん、断ってくれてありがとう、と感謝。
約600ページの長編でしたが、おもしろくて時間を忘れて読めました。 -
びっくりするくらいものすごくおもしろかった。おもしろいって言っていいのかわからないけど、こわいもの見たさというか、こわいのに目を離せないというか、心わしづかみにされたようにぐいぐい引き込まれて、後半なんて本当に読むのがやめられなかった。
水商売しかできないシングルマザーの母親に育てられて貧しい生活を送っていた主人公が、15歳で家を出て母の友人や知り合った女の子とスナックをやって一緒に暮らしはじめ、やがて犯罪に手を出していく、っていう話。
最初のほうは、例えば、子どもが、家のなかで服がたたまれているだけで明るい気持ちになるとか、繁華街に出かけたりしたことがないとか、映画で見るようなことは自分には関係ないことだと思うとか、わたしなんかがあたりまえと思ってきた普通の生活を与えられない子どもがいて、だれからも守られず、気にかけられず、救いの手も差し伸べられないっていうのがすごく苦しくて悲しかった。そういう親の元、家に生まれたっていうだけなのに、普通の生活ができない、普通に働くことすらできないっていう。そうしたら水商売とか犯罪に手を染めるしかない。正しいことではないけど間違ってはいないというか、それしかない……。
でも、ユーモアがあって笑えるというか滑稽に思える部分も多くておもしろいし、主人公にはじめて友達ができてみんなで働いたり一緒に住んだり、途中、青春モノのような感じもして読んでて楽しいところも多かった。
あと、カードを使った犯罪とか(これがいわゆる「出し子」ってやつなのか!と。言葉としては知ってるつもりになっていたけど、実際こういうことをこういう感じでやっているんだな、とリアルにわかる感じがして興味深かった。そして、やっぱり、正しいことではないけれど、生きていくためにはこうするしかないって人もいるんだろうなとも思った。)、死んでしまった人の話とか、ミステリとしても読めそうな感じ。
設定が当時のことを20年後くらいに思い出すって形になっているわけだけど、結局、20年後もあまり変わらず幸せにはなっていないっていうのが、なんだかけっこうつらかった。ラストは、本当のことや正直な気持ちを伝えられたっていうことで少し救いを感じる部分もあったし、そして、ひどいことばかりじゃなくて心から楽しかったこともよかったこともあったと主人公が思えたことも救いだったけど、登場人物のひとりが言ったように、すべてはもう終わったことだ、っていうのも感じてせつなかった。終わるまで待つしかない、っていうような会話も途中であったけど、そんなふうに、人生過ぎていってしまうな、というか。
……というふうに読み終わった感情はけっこうぐちゃぐちゃに乱れていて、そのへんもなんだかすごいものを読んだという気がしたり。 -
十代と「裏社会」。想像以上に「すぐそこ」にあるのだと思った。この作品は2000年頃を舞台としているが、令和となった今も相変わらず(この作品以上に?)、闇バイトなど、何らかの理由で「がんじがらめ」となった十代が利用されている。フィクションなのだろうが、どうしたらこの子たちが救われたのだろうと考えてしまった。
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当時者にしか、わからない葛藤、苦しみ
そこで一体何があったのか?その黄色い家での一部始終を模擬体験させられた。圧倒的な熱量を感じ、そのページ数を忘れて没頭。主人公達が過ごした年代の流行りや出来事が自分に重なり、時代背景を読み取りやすかった。そしてX japan。
この本を読みながら勝手に主題歌としてtearsをヘビーローテーションで聴いていた。何でこんなに不幸の連鎖に見舞われるのか?関わる人間があまりに身勝手であること、そしてその身勝手な者達を切り捨てることが出来ぬことから共に溺死に至るのだろうが、そこが唯一の居場所であるなら…唯一の安息の地であるなら。