ガーンズバック変換 [Kindle]

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (290ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 中国人であり、ミステリ畑出身の作者によるSF短編集。文学やサブカルの知識を凝縮した密度の高い作品が多く、それでいて情緒的な味わいもある。きっと作者は"物語"の力を信じ、愛しているのだろう。パスティーシュとして書かれたそれらには清新さが宿っていた。

    いずれも粒揃いだが「色のない緑」はAI技術を用いた言語SFともいえる作品で、非常に洗練された作品だ。言葉やそこから創られるものの限界性について深く思索しており、論理的であり、強度の強い文学ならではのエモーショナルな感動を覚えた。

    ただし、その無尽蔵な知識は作品内で全てを綺麗に消化できているわけではなく、こだわりが強すぎるあまり使いきれずに投入してしまってる要素もある。その為若干リーダビリティは低いのだが、それは作者が持つポテンシャルの高さを表しているので、この先の活躍が楽しみだと思う。

  • 表題作『ガーンズバック変換』
    中国人作家が「香川県ネットゲーム依存症条例」と「電脳コイル」から着想を得て書かれた。という特異なSF物語。
    主人公は女子高生でカラオケにいったりもする。
    そういう日本的な世界を文字でリアルに表現できていることがまずスゴイ
    他数編の短編集だがSF初心者には難しい哲学的内容である。

  • 巻末「あとがき」でご本人が述べていらっしゃるとおり、「文系とポピュラーカルチャーの知識を大量投入する」作品集だと感じた。わたしたちが見聞きしてきたいろいろなもののが下敷きにされて、現実世界からわずかに延長したような世界が語られている。古典作品の概要と衒学的なアイディアとかが入り交じった話もあれば、誰かが SNS で言及するような内容が小説として肉づけされた物語のように思える作品もある。それがなんであれ、遠い世界のいつかどこかではなく、自分の生きている世界と連動している世界がそこに描かれているように感じた。物語的には、それで? そこから先がもっと知りたいです、と自分的には思われるところで、潔く終幕とされるものも少なくないのが、また面白いなと思った。各話の感想については、「あとがき」を読んで、そうそう、と思ったところも少なくなく、ひとつずつ言及するのはかえって蛇足のようにも思うので避けることにしようと思うけれども、「サンクチュアリ」「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」「ハインリヒ・バナールの文学的肖像」あたりがお気に入り。自分の偏り方よ…… 表題作の「ガーンズバック変換」も好みの話でした。

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著者プロフィール

小説家。1988年北京生まれ。2014年に短編「前奏曲」が第2回華文推理大奨賽最優秀新人賞を受賞。2016年に『元年春之祭』(新星出版社)でデビューする。同作は2018年にハヤカワ・ミステリから邦訳刊行され、日本の新本格に影響された華文ミステリ作家として脚光を浴びる。邦訳書に『雪が白いとき、かつそのときに限り』(ハヤカワ・ミステリ)、『文学少女対数学少女』(ハヤカワ・ミステリ文庫)があるほか、日本刊行の小説アンソロジー『アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー』(編=SFマガジン編集部/ハヤカワ文庫JA)、『異常論文』(編=樋口恭介/ハヤカワ文庫JA)などにも参加している。本作『盟約の少女騎士(スキャルドメール)』が、日本では初の単著書き下ろし作品となる。

「2021年 『盟約の少女騎士』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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