ちぎれた鎖と光の切れ端 [Kindle]

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  • 講談社
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感想・レビュー・書評

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  • 2部構成になっている。

    無人島で起きた連続殺人事件。ミステリー小説にあるような内容かと思ったが、人間模様も奥深い。
    絶望から希望へと展開していくのがいい。
    とても面白い物語で、最後まで飽きなかった。

  • クローズド・サークルである無人島で繰り広げられる惨劇と、そこから遠く離れた大阪で発生する連続殺人事件の二部構成となっている作品。
    二部構成と言えど、そのどちらも一つの作品として発表されていてもおかしくないと思える完成度の高さ。
    さすが史上最年少での江戸川乱歩賞を受賞した作家の作品だと感じた。

    第一部では、実際に自分も無人島に閉じ込められ、周囲の人間が殺されていっている恐怖に支配された。
    また、次第に追い詰められていく様もリアルに感じられた。

    作者の次回作も、必ず読みたいと思った、

  • Z世代のクリスティとはいやはや…って斜に構えて読み始めたんだけど、かなりの力作でおもしろかった。
    宮部みゆきの『模倣犯』をライトにして、追加オプションでキャッチーな要素をいっぱい足したような感じかも。

    正直なところ前半は微妙。無人島コテージ・復讐を誓う主人公・過去の罪を共有して庇い合う軽薄な若者たち・密室殺人・ある法則に従って順番に殺されていく展開、死体の舌を切り取る狂気…ってオイオイてんこ盛りかい!欲張るね~~~って感じだし、「その展開でそうは行動せんやろ」っていうご都合進行も気になる。
    この前読んだ夕木春央『方舟』と共通項多く、どうしても比べながら読んでしまった。

    後半はすごく良かった、特に最後の方。
    未熟な人間の心の移ろい、縦社会の力学(警察・強豪校の部活)、グロテスクな懲罰感情、誰しも持っている二面性などなど、人間心理を描き出すぞ!という意欲が伝わってきた。
    死は平等なのか(卑劣なクソ野郎なら残酷に殺されてもいいのか?的な)っていう、私が個人的に好きなテーマにも触れられてて良かった。



    大胆な2部構成とか派手な連続殺人で人目を引くし、手に取らせる・読ませるエンタメパワーありつつ、核の読み応えポイントはトリックとかじゃなく人間臭いところに置かれててすごく楽しめました。食感の異なるガワと身がそれぞれボリューム満点なのがこの本の素晴らしい個性だと思う。
    逆に言うと本格ミステリを期待する人は満足できないだろうな。結構ツッコミどころ多いし、肝心なところでロジカルじゃなかったりするから。

    あと、Z世代の実態を写し取っているのかどうかは私には判断できないけど、オッサンオバハンの描写の解像度が低いなと思ったね。。まぁ若い人からはこう見えてるってことなんでしょう。

  • クローズド・サークル+ABC殺人事件

    2本分の小説を読んだ気分です。第1部、第2部それぞれで別の連続殺人として成り立ちます。そしてその2本が終盤に1つの話に昇華されていきます。

    1本目は孤島でのクローズド・サークルです。書き方がフェアなので、犯人はすぐにわかりますが手段が全然わかりませんでした。後半の推理合戦みたいなところは一部苦しすぎるかも。。
    2本目は1本目から数年後で、ぜんぜん違う土地と登場人物から始まります。この時点で面食らいます。ナンダコレハ別の小説が始まったのかと。。物語が進むにつれて意図が見えてきます。そして感嘆です。お見事!!

    こんなに良いのに、タイトルがもったいなくないか。。内容をイメージできない。私なら「絶対に見つけてはいけない殺人」とか「ネクスト・マーダー・ファースト・マーダー」にするかな。。(これもイマイチ)

    「Z世代のクリスティ」という重すぎる謎の二つ名に負けない作品を今後も期待してます!

  • 作風が異なる、繋がりある2つの物語を1つの小説にきゅっとまとめてくれた本書

    前編は連絡手段が途絶えた無人島で連続殺人が発生するコテコテの話
    後編は前半で起きた事件と関連が深い事件を解決する刑事もの

    前編はコテコテの舞台とはいいつつも、復讐を計画し且つ今にも実行に移そうとする半殺人鬼が探偵役という設定が新しかった

    探偵役の複雑な心理状況や事件の被害者、真犯人との関係性が見どころの一つなのかなと感じた
    「第一発見者が次の被害者になる」といった謎を通して探偵役と被害者達との関係値が綺麗に描かれていた

    2つの全く異なる話をまとめているのでテンポよく話が進んでいたと思う
    それぞれを別作品として発売してもギリよいのでは?と思うくらい前後編それぞれ読みごたえがあった

    ただ後編の結末を『勝手に』期待していた分、少しだけ肩透かしをくらった

    前後編で探偵役が異なるため、後編では前編で実際に何が起きていたかを推理しつつ事件を解決するといった流れなのだが、
    前編で何が起きたかを読んだから知っている僕からすると「うんうん、そうそう。そこは僕は知ってる」となる場面もあった

    その為もう一つ何か展開があるのかと勝手に期待していたが特になく終わってしまった

    後編の主人公には「その辺で拾った同居中の兄」と「血のつながったほぼ絶縁であろう兄」が登場していて、これはどっちの兄なんだろうと深読みしてしまった場面もあり
    それを絡めた読者向けの仕掛けがあると勝手に勘ぐっていたが特になくて少し残念だった

    全体的にテンポよく読み応えある作品だったため◎
    金田一少年っぽく、やりすぎなくらいコテコテな舞台を好む僕は前編のほうが好み

  • 2種類の小説を楽しんだ気分。

  • 親しかった先輩が死に等しい暴行にあい、その復讐を計画し相手に近付き無人島旅行で殺人計画を実行しようとした。
    その物語とは同時進行でクソな先輩から妹を守る為に殺人を犯した狂った男がいた。

    二部構成で事件の真相が明らかになっていく。
    無人島事件から数年後、優秀すぎる女性刑事が紐解いていくのだがボタンの掛け違いというか現実でも歯車は無惨に回るものなんじゃないかと思う。

    一部目はは無理があるかなと思ったが二部へのフリが良かった。一気読み。面白かった。

  • 前後半に分かれたミステリー。

    前半は、熊本の無人島のコテージに泊まりに来た社会人一年目ぐらいの集団を描く。
    その集団は、7人で6人は高校からの友達だが1人は大学以降の友達。
    実は6人は昔覚醒剤をやっており、ハイになって商店街に放火した時に目撃された高校生をリンチして再起不能にした。その高校生の後輩が復讐のために友達となり、復讐のために無人島旅行に来た。

    のだが、復讐はできずに、一人一人と殺されていく。犯人は管理人だが、管理人が披露する、第一発見者が次の殺人を犯したとする推理も面白い。

    復讐人が最後に腹を刺され、管理人は第一発見者となり、残りの6人+本物の管理人が死体で見つかり終わる。

    後半は大阪。前半の犯人の妹とリンチされた先輩が一緒に暮らしている。連続殺人が発生し、全て第一発見者が次は殺されている。清掃会社で、ごみ収集中に妹が死体を発見してしまい、警察の護衛が入る。
    そのうち、妹も襲われるが、護衛のおかげで助かる。
    熊本旅行をして、真相を確かめる。
    兄が交換殺人で生き残った昏睡入院中の復讐者を殺そうとするも、裏切られて失敗してそいつを殺したり、妹を守るために第一発見者にしたり活躍する。
    最終的に、自らが復讐者を殺しに来たところを取り押さえられて終了。復讐者が目を覚まして、服役中の兄と面会する。

  • ===qte===
    ちぎれた鎖と光の切れ端 荒木あかね氏
    復讐の負の側面を描く
    2023/10/14付日本経済新聞 朝刊
    2022年に江戸川乱歩賞を最年少受賞し、本書は受賞後の第一作となる。熊本の無人島で旅行者が次々と殺された事件から3年後、今度は大阪で連続殺人が発生する。遺体の第一発見者になった女性は警察から犯人に狙われていると告げられる。真相を解く鍵は2つの連続殺人を貫く復讐(ふくしゅう)の連鎖にあった。

     あらき・あかね 98年福岡県生まれ。九州大学文学部卒。2022年『此の世の果ての殺人』で第68回江戸川乱歩賞を最年少で受賞しデビュー。
    あらき・あかね 98年福岡県生まれ。九州大学文学部卒。2022年『此の世の果ての殺人』で第68回江戸川乱歩賞を最年少で受賞しデビュー。

    「2つ目の事件のアイデアを最初に思いついた」と話す。犯人が何らかの法則に従って連続殺人におよぶ筋書きはアガサ・クリスティーの『ABC殺人事件』をほうふつとさせる。「殺人の法則に隠された犯人の目的をどう味付けするかが、ABCパターンのおもしろさ。いつか自分も書きたいと思っていた」

    連続殺人犯の目的は報復。「『復讐を遂げてすっきり終わる作品』ではなく、復讐の負の側面に光を当てる作品にしたかった」。友を殺された恨みを抱える人物が犯人への報復の機会を前にして葛藤する姿に「人を傷つけてはいけない」というメッセージを込めた。

    復讐の動機は愛だ。きょうだいや先輩・後輩などの関係に生まれる絆を描いたが「愛を疑うことを意識して書いた」。妹への思いを言葉で本人に伝えられなかった兄。そのゆがんだ気持ちが殺人の端緒になった。「方向性を間違った愛は加害性を含むことがある」と美しさだけでない愛の多面性を見つめた。

    デビュー作『此(こ)の世の果ての殺人』では自動車教習生と元刑事の女性バディが事件の謎を解いた。今作でもシスターフッド(女性同士の連帯)が鍵になる。事件の真相に迫るのは遺体を発見したゴミ収集員と彼女の護衛係になった刑事。2人とも「男性の多い職場で仕事に誇りをもって働く女性」であり、女性蔑視が残る「前時代的な価値観の家庭で育った」という設定だ。

    「2人が連帯し、事件だけでなく彼女たち自身の問題も乗り越えていく様子を描きたかった」。今後も取り組みたいテーマだという。(講談社・2090円)


    ===unqte===

  • 一部で評判になっているので読んでみた。

    2部構成となっている。
    1部はミステリーで、2部は人間ドラマ。

    ストーリー展開は良いが、あまりにも都合よく進んでしまう物語に興ざめ。
    ミステリーとしてはあまり評価できないかな。

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著者プロフィール

1998年福岡県生まれ。九州大学文学部卒。2022年第68回江戸川乱歩賞を本作で受賞しデビュー。

「2022年 『此の世の果ての殺人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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