- Amazon.co.jp ・電子書籍 (225ページ)
感想・レビュー・書評
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じつはまだ読了していないが、この衝撃の強さが弱まらないうちに書きたかった。良書である。
本書に対しては、資源の有限性を度外視した、患者サイドからの一方的な理想論だと言う人もいるだろう。
しかし、そうした人が求める「じゃあ、どうすればいいのか」に一足跳びで進むのではなく、日本ではどうするか、医者ではなく国民が考えなくては、という問題提起と捉える中で本書の必要性は浮かび上がってくる。
だいたい、私も含めた一般人の多くは本書前半に挙げられた国外の恐ろしい動向を知らず、そこに情報格差があるわけだから、本書がいきおい告発調、啓蒙調になるのは必然だろう。そこにエモーショナルに反発しては本書の有益性を殺してしまうことになる。
命の自己決定権という考え方にはトレードオフがあり、浅慮な一般人(私を含む)や経済効率に追われる医療関係者はえてしてポジティブ面にのみ着目する。本書はその脇に黒々と横たわるダークサイド、ネガティブな側面にフォーカスしたのだ。本を書く者がつねに賛否の両論併記をせねばならない義務もない。
しかもこの著者は自身の立場、主張を隠さない。それはマックスウェーバーが研究者に求めた「誠実さ」の現れで、私には好ましく映る。これは言いたいことのある者がとりうる最善のやり方である。中立を偽装することこそ欺瞞であろう。
しかし、さすが脳死からの臓器移植を思いつき実行した、かの国々よ(誉めてない)・・・詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
安楽死が合法の国で起こっていること。そして、わが国でも目には見えにくいところで起こりつつあること。
もはやこの問題は、苦痛から逃れるためにみずからの意志で死を選ぶことは是か非か、という部分からかけ離れたところにまで及んでいるように思う。QOLの低い人生は不幸なのか。そうした状態の人が生きていても仕方がないなどと、当人以外のだれかが決められるのか。当人の思いさえ日々揺らぐものではないのか。
耐えがたい苦しみを抱え、いっそ死ねたら……と考えている人々の気持ちを蔑ろにしてはいけない。それでも、本書に紹介されているような諸問題を踏まえないまま、「人間らしさ」「生き甲斐」といった言葉を掲げ、死ぬ権利について議論することは恐ろしい。その権利が義務にすり替えられ、弱い立場の人々に降りかかっていく未来は十分想像できることだ。 -
筆者の主張の偏りや錯誤についての指摘もあるようだが、いずれにせよ一方に与するほどに一読で影響を受けるタイプでもない身からすると
「医学的無益」や「死ぬ権利」といった概念が、日本社会で一定の存在感を示すに至った場合に社会的混乱は免れないとは思う。
この問題は長寿化の進む現代では、万人にとっても避けようのない「老い」への向き合い方にも繋がると思うが、尚の事もつれ絡む生命観の議論としてケースバイケースとしての遊びがなければならない課題であることも間違いないのだろう。 -
前半は安楽死が合法化された諸外国について、その導入から現在まで仔細に記されていて、とてもよかったと思います。
尊厳死(消極的安楽死)、積極的安楽死、医師幇助自殺という区別から話は始まり、本書でメインとなるのは後者のふたつ。患者の苦痛を取り除くために行っていた安楽死が、徐々にQOLの多寡で決定されていく過程なども(すこし極端な例が抽出されている感はあるけれど)、おもしろかったです。
ただ、後半になると別の本になったかのように、重度の障害を持った自身の娘と、それにまつわる医療不信の話に変わってきます。それがつまらないわけでもないし、テーマに接続はされるけど、タイトルから求めていた内容かというと微妙なところです。