- DMM.com ・電子書籍
- / ISBN・EAN: 9784152095244
感想・レビュー・書評
-
貧しいのは本人に能力がないせい?向上心が足りないから?自己管理がなってないから?自業自得?
そうかもしれない。特に貧しくない人はそう考えるかも。でもその人の立場に立ってみないと、本当のことはわからない。
本書は、「欠乏」(Scarcity)をキーワードに、金の欠乏や時間の欠乏を同じ枠組みで分析する。欠乏の状況は、視野狭窄(「トンネリング」)をもたらす。これは当面の問題に集中することで、生産性の向上や合理的な判断をもたらすという良い面もある。しかし、逆に、他のことは重要であっても緊急でなければ無視される(目に入らなくなる)こととなる。このため無視された問題が、新たな問題を引き起こし、金のない人は金が、時間のない人は時間がますます足りなくなるという悪循環を引き起こす。また、金や時間が欠乏する状況は、人間にそのことばかり考えさせることで、その人の処理能力に負荷をかけ、判断力の低下をもたらす。そのことがさらに状況の悪化を招く。
貧しいのは、その人個人のせいとは必ずしもいえず、貧しいがゆえに処理能力、判断力が落ち、それがさらに貧困を招くのだというのが、本書の考え方。昔から日本でも「貧すれば鈍する」というが、本書は行動経済学の観点から、それが正しいという。
この知見を元に、視野狭窄を起こしている人に、その視野のトンネルの外からいくら立派なことを言ってもダメで、トンネルの中で視野に入るようにするにはどうすればよいのか(リマインダー)、視野狭窄から脱させるにはどうすればよいのか(スラック)を論じる。
中々、興味深い本だった。また、著者の人に対する温かさを感じさせる本だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示