人間失格 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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感想・レビュー・書評

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  • 1948年に書かれた、太宰治の最期の作品であり、最高傑作とも言われる『人間失格』。海外においても親しまれている作品である。

    本作品連載最終回の掲載直前に太宰が自殺をしたことから、遺書のような小説と言われている。この作品はフィクションでありつつも、主人公が語る過去には太宰治自身の人生を色濃く描いた部分があり、自伝的な小説である。

    太宰と彼を取り巻く女性たちの間での、「自己否定」「自己愛」「薬物中毒」「自殺願望」など、重いテーマを扱っているため、評価は分かれる。しかし、何度も読み返すことで気付かされることがあるため、共感できる部分も多くなるのではないかと思う。

  • 2019年には映画化までされ、とても有名な作品なのに読んでいなかったから読んでみることにした。映画のCMではかなり混沌としていてドロドロという感じだったから、身構えていたけど、あれ?意外とそんなこともない?という印象だった。他人が理解できず孤独を感じたり、酒やたばこ、薬、女に溺れるなんてことは割と普通だと思うし、そういう行為をふと客観的に見てしまって、自己嫌悪にさいなまれるなんてぶっちゃけよくある話だなと思う。でも心中を図るとか自分には共感でなきない場面が多かったから、作品を読んでいて大してつらくなかったのかもしれない。太宰治という人間の普遍性をなんとなく感じ、あ~こういう人もいるんだなーと。もう少し大人になって、いろんな経験を積んでから読んだら、少しは理解できるのかな?と思った。

  • 去年?一昨年?に続いての再読。
    岩井俊二監督『ヴァンパイア』が本作へのオマージュ
    ということを知ったので、映画を観て原作小説を
    読んだ上で、再読したくなった。

    以前読んだ時と同じように、
    この「人間失格」は問題なくすらすら読めた。
    だいぶ前に「斜陽」を物語序盤で断念してしまった程の
    苦手意識があったのだけれど、今なら問題ないかも。
    「人間失格」だけなのか、他もなのかは
    読んでみないことにはわからないけれど。
    これを機会に他作品も触れてみようと思う。

    人との関わり方という点では主人公に対して
    同族嫌悪を感じてしまう部分もあり。
    とはいえ女性にモテるという部分は現実にはないけれど…
    かつて筒井康隆が「人間失格」を
    “読者すべてに自分のことだと思わせてしまう書き方が凄い”
    と評したんだとか。
    人と関わる上で、演技してしまうという部分は
    誰もがきっと持っている部分であり、
    その過多により、この作品への感じ方も変わるのでは…。

    海外では、子供に対する性的虐待を表現してると
    捉えられてるらしい。
    捉え方の違いというのは面白い。

  • 教養のなさが知れる感想だけど、最初の感想は「割と最近の話だった」である。昔の作品は文章が古くて読みにくい、という印象があったのだけど、1948年て割と最近じゃないか。
    自身を俯瞰していてなににも熱意がないような様は、最近読んでいた本との共通点も感じた。最終的な葉蔵の年齢に驚きを隠せない。

  • 太宰治の代表作ともいえる「人間失格」について自分なりにレビューとしてまとめてみました。以下、作品についてのネタバレがありますのでまだ読まれてない方はご注意ください。
    第一の手記において「恥の多い生涯を送ってきました。」この一言から始まることで何かネガティブな雰囲気を感じとりました。太宰治は波瀾万丈な人生を送ったことを、彼について調べた時に十分にわかりましたが、どのような内容が待っているのだろうとドキドキしました。
    小さな頃から誰にも本音を言わずに道化師のように、全てを見透かしているようなどこか子どもらしくない様子をみてこの人には小さな頃から特別な能力があったのだろうと思いました。学校ではわざと自分を戯けて見せて友達の笑いを誘ってみたり、それは友達だけに過ぎず、家族にさえ本来の自分を見せることなく思ったことを口にできなかったり、お父さんの東京のお土産の話からも分かるように、彼は父の機嫌を伺って何か間違いを犯せばすぐに自分でそれをカバーしたりしていて、とても普通の子どもではできないようなことをこの人はしていました。そんな中、太宰は竹一に出会ったのでした。彼もまた他のクラスメートとは違う、太宰がわざとした失敗に気づくような人でした。目立つようなタイプでない竹一から「ワザ。ワザ」と見破られた太宰は震撼しました。「自分は世界が一瞬にして地獄の業火に包まれて燃え上るのを眼前に見るような心地がして、わあっ!と叫んで発狂しそうな気配を必死の力で抑えました。」と言うほどです。自分が作り上げてきた偽の自分が竹一にバレてしまったこと、またそれをクラスメートにばらされてしまうことが不安でしょうがなくてそれだけ恐れていたのです。でもそれは、唯一太宰が素の自分でいられる相手でもあったのです。竹一の家に行って話をしたり、太宰の珍しく子どもらしい場面を見ることもできます。また、竹一による予言にも振り回されることになるのです。その予言の通りと言ってもいいのでしょうか、太宰は様々な女性に惚れられたりしたのです。その中でも太宰が初めて恋したツネ子と一緒に自殺を図りましたが、自分だけ助かってしまったことを相当悔やんだことと思います。この後も、ヨシ子という女性と暮らしたり、その中でも様々な葛藤や病気など苦しいことばかりある太宰ですが、これはこの作品を読んだ私の推測にすぎませんが、彼は誰かに心から愛してもらい、自分も心から愛することを望んでいたのではないかと感じました。全体的に暗い内容の作品ですが、その中でも彼の生い立ちや苦しみを知ることができました。テンポも良く、さすが太宰治だなぁと思いました。

  • 太宰治の最高傑作ともいわれるこの『人間失格』。1948年に作品が発表されて以来累計発行部数は新潮文庫だけで600万部を突破しており、これは夏目漱石の著書である『こころ』と並ぶ。今までに二度に渡る映画化のほか、漫画化も多数行われ、この作品は今でも多くの人々の心を引きつけている。
     主人公である葉蔵の手記として展開されるこの作品は、「恥の多い生涯を送ってきました。」という文章から始まる。鮮明かつ確かな言葉で綴られたおよそ7万5000字は、葉蔵の暗く冷たい過去をありありと浮かび上がらせて容易に想像させるので、読み切るまでに膨大なカロリーを消費させ、良くも悪くも読んでいて非常に疲れる作品と言える。私たちには想像もし得ない壮絶な人生であるかのように見えて、随所にどこか私たちの人生にも潜んでいそうな闇を抱えており、私に関しては共感を覚えることもあった。他の書評を見てみると、私と同じようにこの作品に共感を覚えた読者が多数存在した。では、この共感は一体何処から来るのか?これは私が思うに、葉蔵が「恥」とする彼の人生の辛い出来事は、誰しもが経験し得るものだからである。彼の言う恥は、決して世紀の大犯罪なんかではなく、幼い頃の道化に始まり女性問題や依存症など、読み手にとっても全くあり得ない経験(恥)ではないのである。きっと葉蔵と同じ経験をした読者は多数存在するだろう。だからこそ多くの共感を呼び、今もなお愛されているのではないだろうか。
    読み進めるほどに目の前で救いようもなく堕ちていく葉蔵の姿は無様で、彼の言う通り人間失格だと言えるだろう。何より、彼に降りかかる災難の多くは彼自身が起点となって起こっており、端的に表現すればそれは「自業自得」である。しかし一方で、本当は彼自身「人間」になりたかったのではないだろうかとの想像もさせる。彼の言う「人間」とは一体何か?一度読んだだけでは答えは出ない。もう読みたくないのに、ふともう一度読もうかと思わされる作品がこの『人間失格』なのである。
     この本が連載を完了させたのと同時に自らこの世を去った太宰。私には、これが太宰の人生であるかのように思えて仕方がない。様々な過去や悩みを持つ現代の私たち読むからこそ感じ取れるものが多く存在する一冊なので、是非一度手に取ってみてほしい。

  • 『人間失格』は太宰治の完結作としては最後となる有名な作品である。

    主人公の葉蔵は幼いころから他人が何を感じているかが理解できず、それ故に人に対しての恐怖を人一倍感じていた。そこでその不安や恐怖をごまかすために「道化」を演じ続けるが、次第に酒や煙草、女にはまっていき堕落してしまう。そんな葉蔵の手記を3つにまとめた作品である。

    この物語は全体的に暗いトーンで、葉蔵の心の闇が赤裸々につづられているのが印象に残った。人を理解できない恐怖、自分は孤独であるという自覚から葉蔵はこのような結末になったのだと考えられるが、少なからず誰もが抱いたことのある不安なのではないかと思った。人間失格という衝撃的なタイトルではあるが、人間そのものを考えるきっかけになるのではないかと思う。

  • 東北の裕福な地主の家庭に生まれた大庭葉蔵は、幼い頃から他人を信じることなく、思い込みが激しいために不安や孤独を感じてしまう変わった人物であった。そんな葉蔵は社会に溶け込むことができずにいたが、高等学校に進学し上京をするのをきっかけに少しでも馴染もうと試みる。しかし、馴染むために、自分の感情を隠し押し殺すことで精神的に病んでしまい、酒や女に逃げるようになった。そして、その女とともに心中をしたものの、女だけが命を落とし、その出来事で混乱したものの、また一人の女に惹かれ、結婚をする。しかし、その結婚生活は長くは続かず、また死を追い求めてしまうようになった。そんな葉蔵を見ていた周囲の人々は、彼を脳病院へ連れて行った。そのとき葉蔵は、ここに連れてこられるということは、自分が狂人なのだと思い、自分が人間として失格なのだと悟った。葉蔵は生涯自分に絶望し続け、悲惨な人生を歩んだのである。

  • 意外と知っているようで知らなかった本作、確かに小中学生にオススメする内容ではないんだけども。
    ていうかヒモがモゴモゴ言い訳しながらダラダラ生きていく話なんだけど、毎度思うに、何故に昔の偉い作家はこういう生き方が好きなんか。好きというより実際に本人がそうなのか。
    とかなんとか言いながら、ダメ人間っぷりを堪能するんだけども、ダメ人間のくせにいちいち文学的というか、口が達者に言い訳するから、妙にイラッとするけど、それも作者の計算のうちか。
    そして最終的には現実路線で裏切る堀木がなんとも。実に普通。

  • 本作は太宰治が執筆したものではない。太宰の知人の知人である大庭葉蔵が執筆した手記を『人間失格』として太宰が発表したものである。太宰によると、この手記が書かれたのは昭和5-7(1930-33)年頃のようだ。

    太宰は昭和10(1935)年頃、東京・京橋のバーのマダム(本作に登場する、京橋のバーのマダムと同じ人物だと考えられる)と出会う。そして昭和23(1948)年、千葉県船橋市の喫茶店で再会する。その時に太宰がマダムから託されたのが、マダムの知人である葉蔵の手記である。同年、この手記を雑誌連載で発表し、今や太宰の代表作のひとつとして、世に知られている。

    太宰は葉蔵の写真を見て、彼のことを「狂人」と評した。そして手記から彼の生きざまを垣間見て『人間失格』とした。しかし葉蔵に関わった人はみな、太宰の主張と異なる評価をしている。本作にはそんな周りの期待に応えようとした葉蔵の苦悩が描かれている。

    葉蔵の行動は目に余るものがある。しかし葉蔵は決して人間失格なんかではないと感じた。人に嫌われたくない、よく思われたいという、人間なら誰しも考えるような思いが人一倍強かったからこそ、周りの人に気に入られようと努力しただけだ。そしてその結果、人生に疲れ果ててしまい、あんな行動に出てしまったのではないだろうか。

    人生について今一度考えてみたい人におすすめの作品。

著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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