世間の常識の及ばない世界。一般的な倫理を振りかざして佐助と春琴の感情や関係を云々するのは野暮なことだ。とにかく、その狂気が美しい。マゾヒズムの極致が芸術の領域に入るのだということをこの作品が初めて突きつけてきた時、僕は心の中で震えていたと思う。
なにを隠そう、僕の中にも佐助的な感性が確実に存在していると思う。自分の目を突き刺す勇気は流石にないが、何かの存在を愛することは、その存在の前にひれ伏すことだと思う。これは自己犠牲的に見えて本当は真逆で、究極的にエゴイスティックな心の有り様だと思う。ひれ伏したくなるような圧倒性を持たない存在に対しては、愛するに値しないとバッサリ斬り捨てる感性だからだ。
そんな感情を抱かせてくれる女性など、そう巡り会えるものでは無い。佐助の人生はきっと、本当に幸せだったのだろう。
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- 感想投稿日 : 2018年6月23日
- 読了日 : 2018年4月4日
- 本棚登録日 : 2018年4月4日
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