スローターハウス5 (ハヤカワ文庫 SF 302)

  • 早川書房 (1978年12月31日発売)
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感想 : 244
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SFでもあり、戦争小説でもあり、半自伝的小説である。
簡単にはジャンル分けができないカート・ヴォネガットの「スローターハウス5」をようやく読了。

「けいれん的時間旅行者」となったビリーは、自らの人生の未来と過去を行き来する。まばたき一つで幸福な結婚生活から、ドイツ軍の捕虜時代へ。あるいは眠りのうちにトラルファマドール星へ。

生も死も、幸も不幸も、過去から未来までどの瞬間も並列して存在するかのような、トラルファマドール的な時間感覚が作中で一貫している。そしてどんな凄惨な出来事も「そういうものだ」の一言で端的に語られる。
ドレスデン無差別爆撃という戦争体験を経た著者が小説としてこの体験を語る際に、この言葉が、トラルファマドールの視点がどうしても必要だったのだろう。

到底一人の人間が受け止めきれない戦争という悲劇が現在も繰り返されていること、その現実に向き合わざるを得ない。そんな読書体験を提供してくれたとともに、SFとしての面白さも感じられる作品だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2024年3月16日
読了日 : 2024年3月15日
本棚登録日 : 2024年3月10日

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