福音館書店の「子どもの館」という雑誌に1975年から1年間にわたって執筆し、それをまとめたのが本書。400ページもある。
河合さんは、和洋の昔話を読み込んでいるので、たくさんの話の中から、共通点や違いを比較するのが上手である。
しかし、昔話をほとんど知らない、と言うか、興味がない私には、感情移入し難い。
後半に矢川澄子さんの訳で、グリム童話を10冊ほど紹介してあるので、そっちから読んだ方が良かったかもしれない。
河合さんの童話の博識に感心する本であるが、こと心理学の内容に関しては他の本を参考にしたほうが良いと、私は思った。
p27に、「人類は超人的な子どもの話を好む」という例で、河合さんにはめずらしく、身内の話があった。
『筆者が昔話の起源について例としてあげたいことは、次のようなことである。私はあるとき町の本屋で立ち読みをしていると、主婦たちが噂話をしているのが聞こえてきた。それによると、ある子どもが父親の留学にともなわれてスイスに行き、そこで日本語を忘れてしまってドイツ語でばかり話をしていた。ところで最近帰国してきたが、たちまちに日本語を思い出し、クラスで一番になってしまったというのである。
主婦たちはその「すばらしい子」の話に夢中であったが、私はそれが事実とはずいぶん異なることを知っていた。というのは、それは私の子どものことに違いないからであった。確かに子どもがスイスに行き、最近帰国したことは事実である。しかし、日本語を忘れてしまったとか、たちまち一番になったなどは真実ではない。』
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
心理学
- 感想投稿日 : 2022年2月16日
- 読了日 : 2022年2月16日
- 本棚登録日 : 2021年11月12日
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