いつか読もうとずっと思っていた一冊。
「見られずに見たい」という人間の潜在的?な欲求を、箱男による不在証明(存在証明の放棄)で浮き彫りにしていて、すごく興味をそそられる話と展開ではあるんだけど、小説を読んで久しぶりに頭がこんがらがった。
めまぐるしい場面の遷移に、何度も置いてけぼりをくらった。難解で、きっちり読み込めた気がしないけど、でも面白かったと思う。
現代はSNSの普及もあって、自身の匿名性を保ちつつ相手の思考や行動を知ることが可能になった。
発信者であったとしても受信者であったとしても、この関係性の構図は多分同じ。
匿名である、ということは心が安らぐ。私はこの本を程良いざわめきのあるカフェで読んでいたけれど、そこでは自分も景色と一体化している気がしてむしょうに落ち着いた。景色の一部になって悠然と周囲を見渡すことができた。
あるいは私がよくやってしまう、ベランダから通りを見下ろして行き交う人間をぼーっと観察してしまうあれも、似たような事なのかもしれない。
見ること、見られること、匿名性、覗き、露出、透明人間、もっと深く掘り下げて追求してみたいテーマだ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年5月12日
- 読了日 : 2022年5月11日
- 本棚登録日 : 2022年5月11日
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