天使の囀り (角川ホラー文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2000年12月8日発売)
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本棚登録 : 8940
感想 : 798
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多くの怖さの中に、美しさを放つ表現が含まれる。
人が死に向かう姿に目を塞ぎたくなる気持ちと同時に、私の中で、性的な興奮にも似た感情が湧くことに気付く。これは私の潜在的な性癖によるものなのか。
読了直後、貴志祐介ファンの妻と本書について話しをした。不思議なことに妻も自然と、私と似た感覚があったそうだ。
他の読者の方達にも、特定の描写にどこか性的な興奮に似た感情を抱いた人はいるのではないだろうか。
これは著者の表現の巧さによるものだ。
ともあれ、決して救いのある物語ではない。当然エンタメとして楽しむことが大切である。

以下、ネタバレ有。(備忘録)

霊長類に寄生するブラジル脳線虫と呼ばれる寄生虫が、猿から人へ寄生することで、強い快感を宿主に与える。それは恐怖をそのまま快感へ変換することになる。
これまで強いストレスだったものほど、その反発で強い快感を得る対象となる。
それは虫、汚れ、あらゆるものへの感情を快感に変えた。抗えない快感に、人は自制を失い狂った行動を取る。どのような経路を辿ろうが、感染した者を待っているのは死だ。

読む手が止まらないとは正にこのこと。

天使の囀りが聞こえて来そうで怖いので、次の本へ移りたいと思う。

読了。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年9月9日
読了日 : 2020年9月8日
本棚登録日 : 2020年5月30日

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