ユニクロ潜入一年

著者 :
  • 文藝春秋 (2017年10月27日発売)
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一時期(多分この本が出版された頃)、ブラック企業という言葉が流行語のように巷にあふれていた。
そんな頃『ブラック』であると糾弾されたユニクロに潜入取材をし書かれたノンフィクション。

著者は社長のワンマン経営がブラックの原因であるとみているようだが、それだけなのだろうか。
確かに極端な権力集中で、各店舗の店長どころか本部の役員ですら意見を言えないような雰囲気であるらしいことはわかる。
そして、往々にしてそういう職場では、トップの逆鱗に触れないように事なかれ主義と、目に見える部分の体裁だけを取り繕うことが起こりがちである。

実際、著者が経験した中でも、タックスフリー用のレジの案内を英語で書いたらどうだという案は却下され、日本語の「このレジはタックスフリー用ではありません」という案内が、普通のレジの脇に置かれただけということがあった。
良い意見はどんどん採用しようという風潮がない職場は、世間の変化に対応しきれないのではないかな。

国外の工場でのブラック案件についても、他国のアパレル企業が対応を発表している中で、ユニクロの対応はいかにも他人事だ。
自社の社員やアルバイトに対して過剰要求(日常化する長時間労働や、サービス残業等)をしている企業が、自社工場ではない外国の工場の社員の労働条件なんて、当然他人事なのだろうけれど。

例えば、忙しい時間帯や繁忙期などの時給を上げる、というようなことすらしないで、「やりがい」「達成感」をエサにどんどんシフトを入れていく。
こういうのを「やりがい搾取」というのだそうだ。
アルバイトの学生が欲しいのは、バイトのやりがいではなくお金だろう。
しかし強引なシフトを強要され、学校に行く時間すらなくなったというのは、学生に対して企業の責任ってないの?

著者が最初に潜入したのが「イオンモール幕張新都心店」ということで、娘が別の企業で働いていたこともあり、余計に心に迫るものがあった。
当時、娘もバイト学生のやりくりがつかず、長時間勤務で休日出勤で、と、働きづめで、会うたび「つらい」と泣いていたことが思い出される。(違う業種なのに!)

Amazonのレヴューを読むと、「こんなの普通じゃないの?」みたいな意見もあって、それほどにブラック業態が日常化していたんだなと思う。
今はどうなんだろう?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年2月10日
読了日 : 2023年2月10日
本棚登録日 : 2023年2月10日

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