この世にたやすい仕事はない (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2018年11月28日発売)
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前職で10年以上まじめに仕事を続けた結果、燃え尽き辞めてしまった30代半ばの女性が主人公。当面のつなぎとして異なる5つの仕事を経て、自分と仕事との距離感と価値観を取り戻していく物語。

書店で見つけ、表題名に同調し、衝動買いに至った。

「みはりのしごと」「バスのアナウンスのしごと」「おかきの袋のしごと」「路地を訪ねるしごと」「大きな森の小屋での簡単なしごと」など、しごとの着眼点がユーモラス。

初著者作品だったが、言葉選びのセンス、放つタイミング、時に刺さる散りばめられたパワーワードがグイグイと私のツボを貫いてくる。兎角シュールなのである。

私は通読時に登場人物の台詞によって心を揺さぶられることが多いのだが、本作品は【地の文】にこそ共感できるポイントが綴られている。

よって、読み飛ばせない読み飛ばしたくないという感情が働いて、隅々まで隈なく読み耽る読書に至ったのは、初体験だったのかもしれない。

楽しい仕事を選んだつもりでも結果しんどい。
なぜならば…の先に、読者それぞれの答えがあろう作品であった。

そして私は、私なりの答えを見つけ受け取った。

きっと私は、ずっとしんどいであろう。
私は生涯、きっとそちらを選び続けるのであろう。

それで良かろう。それが良かろうもん。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年11月3日
読了日 : 2021年11月3日
本棚登録日 : 2021年11月3日

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