クリスマス・プレゼント (文春文庫 テ 11-8)

  • 文藝春秋 (2005年12月6日発売)
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アメリカの作家ジェフリー・ディーヴァーのミステリ短篇集『クリスマス・プレゼント(原題:Twisted)』を読みました。
ここのところミステリ小説はアメリカの作家の作品が続いています……ジェフリー・ディーヴァーの作品は、7年前に読んだ『007 白紙委任状』以来なので久し振りですね。

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ひねりにひねった短篇16連発。
原題もズバリ“Twisted”。
これぞ「どんでん返しの魔術師」ディーヴァーの真骨頂だ!

スーパーモデルが選んだ究極のストーカー撃退法、オタク少年の逆襲譚、未亡人と詐欺師の騙しあい、釣り好きのエリートの秘密の釣果、有閑マダム相手の精神分析家の野望――。
ディーヴァー・マジックが次々に炸裂するミステリー短篇集。
お馴染みリンカーン・ライムとアメリア・サックスが登場する「クリスマス・プレゼント」は本書のための書き下ろし。
2006年週刊文春ミステリーベスト10第8位、このミステリーがすごい!第2位。
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2003年(平成15年)に刊行された短篇集……以下の16篇が収録されています。

 ■はじめに 池田真紀子
 ■ジョナサンがいない(原題:Without Jonathan) 土屋晃
 ■ウィークエンダー(原題:The Weekender) 土屋晃
 ■サービス料として(原題:For Service Rendered) 土屋晃
 ■ビューティフル(原題:Beautiful) 池田真紀子
 ■身代わり(原題:The Fall Guy) 土屋晃
 ■見解(原題:Eye to Eye) 森嶋マリ
 ■三角関係(原題:Triabgle) 池田真紀子
 ■この世はすべてひとつの舞台(原題:All the World’s a Stage)
 ■釣り日和(原題:Gone Fishing) 土屋晃
 ■ノクターン(原題:Nocturne) 池田真紀子
 ■被包含犯罪(原題:Lesser-Included Offense) 池田真紀子
 ■宛名のないカード(原題:The Bkank Card) 藤田佳澄
 ■クリスマスプレゼント(原題:The Christmas Present) 池田真紀子
 ■超越した愛(原題:Together) 藤田佳澄
 ■パインクリークの未亡人(原題:The Widow of Pine Creek) 池田真紀子
 ■ひざまずく兵士(原題:The Kneeling Soldier) 池田真紀子
 ■解説 三橋曉

原題は『Twisted』……つまり「ひねり」で、その名の通り全ての作品でどんでん返しが仕込まれている、、、

ストーカーに悩むモデル、危ない大金を手にした警官、罪を認めない悪党と対峙する検事など、ディーヴァー度が凝縮された全16篇。

どんでん返しがメインの秀逸な作品が並んだ短篇集でしたねー 16篇、どの作品も意外性のある結末が待っていて愉しめました……そんな中で特に面白かったのは、

ピート・アンダーソンは古本屋から万引きしてきた書籍『三角関係』をなめるように読み、三角関係が引き起こした殺人事件の一部始終をしっかり頭に入れ、同居しているモーと彼女と付き合っているダグとの三角関係を解消しようと計画する……この叙述トリックにはやられました、途中にヒントも隠されていたんだけど心地よく騙された『三角関係』、

有罪が確実な裁判、その被告人レイ・ハートマンは優秀な弁護士を雇い無罪を勝ち取るが、法廷で最後に検事ダニー・トリボウはある質問をする、そして、その質問こそが……すっきりしてわかりやすい、そして結末が心地良い法廷闘争を描いた『被包含犯罪』、

四肢麻痺で車椅子の犯罪学者を主人公としたリンカーン・ライム・シリーズのスピンオフ……クリスマスの日、少女カーリーが自分の母親スーザンが行方不明になって探して欲しいとライムに頼んできたことから、ライムはパートナーのアメリア・サックス等と捜索を行うことになり、それがきっかけで家族のトラブルに巻き込まれる『クリスマスプレゼント』、

の3篇かな……それ以外では、

夫ジョナサンの思い出に苦しんでいる34歳のマリッサは一人のハンサムな男性と知り合った……しかし、その男は殺人鬼だった というドキドキの展開の『ジョナサンがいない』、

ハリー・バーンスタインはNYのパーク・アヴェニューにオフィスを持つセラピスト……患者で1980年代にドナルド・トランプが建てた豪奢な高層ビルに住んでいるパッツィ・ランドルフが彼にひとつの転機をもたらす『サービス料として』、

夫スタンを消したいキャロリンは、帰宅途中のガス・ステーションで強盗に襲われたところを前科者のローレンスに助けられ、彼の手を借りて夫を殺害しようとするが……因果応報、天網恢恢疎にして漏らさず的な展開がスッキリする『身代わり』、

保安官助手のエド、ボズは強盗殺人事件の目撃者としてナサニエル・ホーソン校時代の同級生ネイトから無理矢理証言を得ようとしていた……ネイトはエドとボズが学生時代に虐めていた人物で、その間には当然、見解の相違があり、当然の結末に向かう『見解』、

殺人事件が頻発しており幼い娘ジェシカから心配されながらも、休日の気分転換のために釣りに出かける父親アレックス……その釣り場には言動が不審な一人の男性が! 温和な家族小説的な展開から不気味で異常な世界への転換が見事な『釣り日和』、

音楽をこよなく愛するマンハッタンの警官トニー・ヴィンチェンツォは、ニュー・アメリカン交響楽団の第一ヴァイオリン奏者エドワール・ピトキンがストラディヴァリウスを強盗に取られる瞬間に居合わせたことから捜査に加わることに……彼が突き止めるた犯人は、まだ若い少年だった! 心がぞわぞわする嫌な展開の作品が多い中、心温まる展開に好感が持てる『ノクターン』、

あたりが印象に残りました……面白かったなー リンカーン・ライム・シリーズは機会があれば長篇を読んでみたいですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: <読む>ミステリ(海外)
感想投稿日 : 2024年3月9日
読了日 : 2024年3月9日
本棚登録日 : 2024年2月10日

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