全8部のうち本巻では第3部及び第4部収録。
自分より優れている人のもとで魂の安らぎを得たいと考え、妻として我が身を捧げ、夫の生活を確固たるものにしながら、自分の生活を高めていこうと結婚生活に入ったドロシアであったが、夫カソーボンとの関係は結婚当初から違和に満ちたものとなってしまっていた。
他方医学の発展と自己の成功の大志を抱く医師リドゲイトは、美しいロザモンドに魅せられ、予期していたよりも早い時期に結婚に向かうこととなった。
また、ごうつくばりの老人の遺産を巡るゴタゴタや、政治に関心を示し始めた地主と周囲の者たちとの軋轢など、物語が動き出す速度が早まってきている感がする。
人と人との関わりに関して、それぞれの考え方や思いが綿密に記述され、随所に挟まれる語り手による考察と相俟って、多面的な角度から登場人物に対するイメージを構築できる。
また、一つの地方に暮らす多様な階級の人物が存在感を持って描かれており、社会的地位や財産に伴う上下関係意識や体面の問題、職業に関する意識や価値観、男女・夫婦の役割分担、政治や宗教についての考え方などが、各人の発言や行動を通して多層的に取り上げられる。
本巻終盤では、全体的に不穏な気配を感じさせるようになってきており、どのような展開が待っているのか、次巻が楽しみだ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年5月10日
- 読了日 : 2021年5月9日
- 本棚登録日 : 2021年5月9日
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