ミステリを通して社会を描く。最近のミステリの傾向だが、北欧ミステリはマルティン・ベックシリーズを筆頭にそうした傾向が強く、捜査官エーレンデュルを主人公とする本シリーズも同様の指向性を持っている。
冒頭、人骨が発見される。一点、夫から妻に対する暴力の描写。
骨の主は誰なのか、どうして埋められたのか、事件性はあるのか、捜査活動が進んでいく。一方で凄まじい家庭内暴力。人が人に暴力を振るい屈従に追い込んでいく様子がこれでもかと描かれる。
そしてまた、捜査の責任者、主人公エーレンデュルの痛々しい過去が少しずつ明らかにされていく。破綻した家庭生活と捨ててしまった子供たち。ドラッグに身を持ち崩した娘が昏睡状態に陥り、その安否を気遣いつつ捜査をしていかなければならない苦悩。
現在の捜査によって、過去の家族を巡る物語が掘り起こされ、あまりにも哀しい真実が最後に明らかになる。
読み応えあり。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年1月5日
- 読了日 : 2021年1月3日
- 本棚登録日 : 2021年1月3日
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