著者は言う。「本書でわたしが試みたのは、次代の展望を提示することではなく、わたしたちの視野を開放し、わたしたちの可能性についての感覚を拡大することであった。つまり、時代にふさわしい大きな尺度と規模で思考を開始するとはどういうことか、問いかけはじめることである。」
この言葉通り、著者の専門である人類学の知見に導かれ、貨幣と暴力5000年の歴史を辿ることになる。貨幣の起源に関する経済学の誤謬についての論から始まり、奴隷制の歴史と意味合い、負債と信用、交換と贈与について、具体の社会の例を元に、思いも寄らぬ解釈、見解が次々と展開される。
とりあえず通読はしてみたが、その情報量の多さと斬新な見解の連続に圧倒されてしまい、一読ではとても頭を整理しきれなかった。
ただ、著者の紹介する様々な社会における経済活動の歴史の中に、今後の資本主義社会の行く末を考える材料がたくさん潜んでいることは間違いないだろう。
つい最近御逝去の報に接したが、シャープな考察を新たに読むことが出来なくなってしまったことは、非常に悲しい。
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- 感想投稿日 : 2020年9月22日
- 読了日 : 2020年9月22日
- 本棚登録日 : 2020年9月22日
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