沢木耕太郎『深夜特急1 香港・マカオ』新潮文庫。
文字拡大増補新版として月に2巻ずつ新たに刊行ということで、再読してみることにした。本作は、沢木耕太郎の名を世に知らしめた作品であり、刊行当時は『若者たちのバイブル』と呼ばれたことを記憶している。また、当時の若い自分に旅をさせる切っ掛けを作ってくれた作品でもある。
再読してみると、若い時こそ無理をしてでも旅をすべきだと、あらためて思った。日本を飛び出して世界へというのが難しいなら、国内を最低でも1ヶ月くらい旅するのが良い。なるべく節約して、目的や計画も最低限にして、あてどもなく彷徨えば、自分の中の何かが変わっていることに気付くことだろう。
田舎者の自分には東京でも充分に異国のような喧騒を感じるが、中国やタイには東京とはまた違う質の奇妙な強いエネルギーを感じる。国土の広さや人口規模、風土や文化の違いというだけではなく、人間の逞しさや熱量が日本人とは全く違うように思う。
この第1巻では、アパートの部屋を整理し、引出しの中の小銭までかき集めて1,500ドルのトラベラーズ・チェックと400ドルの現金を作った著者がインドのデリーからロンドンまで乗り合いバスで移動することを主題に旅に出る場面が描かれる。しかし、著者が東京ーデリー間の航空券をストップ・オーバーで東京ー香港ーバンコクーデリーに変更したのが運の尽き。最初に立ち寄った香港でアジアの喧騒と熱狂に魅了されてしまう。そして、傑作小説『波の音が消えるまで』に描かれていたマカオのカジノでギャンブルにハマる……
巻末に山口文憲と沢木耕太郎の対談『出発の年齢』と『あの旅をめぐるエッセイI 』を収録。
本体価格550円
★★★★★
- 感想投稿日 : 2020年6月27日
- 読了日 : 2020年6月27日
- 本棚登録日 : 2020年6月26日
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