1941年に出版された古典的名著。
「人間は自由を希求しながらも、自由の孤独感に耐えられず、自らの自由を投げ出すことがある」ということを社会心理学の視点から分析したものである。
自由には近代人にとって常に2つの意味合いがあり、能動的に生きるためのものであると同時に、孤独や不安を引き起こすものである。それゆえに、自由を活かし、自己実現をする人々がいる一方で、自由を捨てて会社や他者に従属して人形のように生きる人々も出てくる。
これは、現代に生きる私達の状況を見事に描き出しているだろう。自分のしたいことに熱中して社会の注目を浴びている人がいる一方で、ブラック企業で酷使されている人もいるのだから。
では、解決策は何だろうか。フロムは次のようなことを述べている。
・社会に流されないで自発的な行動をする。金銭など目標や結果に縛られず、自分がしたいことに打ち込み、プロセスを楽しむ。自分と自分のすることを愛し、他者を愛することで、支配や従属ではない連帯が生まれる。
・個々人が自己実現を目指すと同時に、他者を尊重し、社会の問題を自分の問題のように考え、積極的な社会参加をすることができれば、孤独や無力感という絶望を克服し、デモクラシーを前進させることができる。
2020年になっても実現できていないのだから、プラトンの哲人政治を聞くような空想めいた感じがするのは否めないかもしれない。
しかし、自分の在り方や、社会との関わり方を再考するヒントにはなるだろう。
この本は今読んでも色褪せない古典的な名著である。
- 感想投稿日 : 2021年10月9日
- 読了日 : 2021年10月9日
- 本棚登録日 : 2021年10月9日
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