博士の愛した数式 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2005年11月26日発売)
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この小説も西加奈子さんの「i」と同じく虚数から始まる。
年末の旅行、帰省のお供にと購入した2冊の文庫本が、期せずして共に虚数から始まる偶然に、まずニヤニヤしてしまった。

何だよ、アイはあちこちに存在するじゃないか、曽田アイ。

この本は、
80分しか記憶が維持できない博士、シングルマザーの家政婦(私)、そして、家政婦の息子ルートの3人が織りなす、何かが欠けていつつも心あたたまる交流の話。

80分の記憶ではどこにも到達し得ない。だからこそ、美しくかけがえのない、純粋な愛がそこにはある。

幸せとは何か?ということを考えてしまった。

感想書きながら気がついたんだけど…
そうか、博士と義姉(未亡人)はかつて恋仲だったのね。事故で博士の脳挫傷を負って、その禁断の愛は永遠に封じざるを得なくなったんだ。

それは、義姉の胸中を察すると、大変重くて辛いものがある。

でも、「オイラーの等式」が全てを包み込んでくれた。
数学に疎い僕は、まだその部分がぼやっとしているけど、もう少しこの数式を勉強すれば、もしかするとまた違うものが見えるのかもしれない。

あと、背番号が完全数の江夏豊が大々的にフィーチャーされていて…というか、江夏豊なしにはこの小説は成立しない。
江夏豊がこんなインテリジェンスな小説の中で、そんなに重要な存在であるということも、よくよく考えてみると笑える。

じわじわっといろいろなものが広がってゆく。
とても不思議で奥が深い小説。
すごいっす。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 娘に読ませたい本
感想投稿日 : 2020年1月7日
読了日 : 2020年1月5日
本棚登録日 : 2020年1月4日

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