「ぼんくら」から始まる同心 井筒平四郎と周辺の人々の物語の最終巻を読み終えた。村上豊さんのひょうひょうとした挿画も味わいがあって、手に取るのが楽しみなシリーズだった!
宮部さんの時代小説は、人物造形や描写について、その背景や人物描写がとても丁寧で、作り込まれたあざとさも感じず自然で、興味深く読み易いという印象。
おそらく、宮部さんと描かれる登場人物たちの程よい距離が、読んでいて心地よいと感じるのだと思う。遠すぎず、近すぎず、それぞれ魅力もあれば、誰しも認めたくない人間の業や性由来の気性に、どこか自分を重ねながら読んでいるのかもしれない。
ただ、この長編シリーズ、さすがに最終編のため、多めの登場人物たち。記憶がすぐ飛ぶので、忘れないうちにと、私自身がこの下巻は消化試合の感否めず。
女性の嫉妬にスポットを当てている描写が少しばかり多めで、事件の種明かしも「さもありなん」。もう少し毛色の違うエピソードや背景があれば、さらにぐいぐいだったかな。
個人的には、おでこ君の実母おきえの来た道、行く道が人間臭くて良かった。自分勝手で、子を捨てる事すら厭わない女性。女性の道を選んだようでいて、実は自己決定をきっちりと。宮部さんが善悪ではなく、描き切っている様が心地よかった。
さてと、次は「あかんべい」読もう。楽しみが続く。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年6月7日
- 読了日 : 2019年6月6日
- 本棚登録日 : 2019年5月17日
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