慈雨

著者 :
  • 集英社 (2016年10月26日発売)
3.76
  • (123)
  • (274)
  • (220)
  • (25)
  • (2)
本棚登録 : 1593
感想 : 254
4

警察を定年退職した神場は、妻と四国の八十八ヶ所を巡るお遍路旅に出る。
誰にも明かされない胸中に、16年前に起きた純子ちゃん殺害事件の冤罪に関わる秘密を抱えていた。そして今、その事件とよく似た手口で、愛里菜ちゃん殺害事件が起きてしまう。

事件性に同一犯を疑い始めた神場は、過去の冤罪がなければ、こうした同じ手口による被害者がでる事は2度となかったのではないかと、後悔を募らせる。
過去の事件を調べようにも、神場は刑事を退職した身だ。警察内で優秀な信頼のおける部下、緒方と連絡を取り、犯人逮捕への強い思いを抱く。

お遍路の旅を進める中で何度も純子ちゃんの夢を見たり、自分を責める場面が出てくるが、事件解決への糸口は、神馬の助言からであった。
刑事に強い責任を持ち、国民を守る義務を全うした神場の生真面目さと、冤罪から被害者が出てしまったという後悔がどんな場面からでも窺える。

犯人逮捕への瞬間は、手に汗握る展開で、読み手に伝わる臨場感が凄かった。
ドキドキしてサスペンスドラマを一気に見た感覚と似ている。
またキレのある男前の文章も、刑事の渋くてカッコいいイメージにピッタリだった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年9月17日
読了日 : 2020年9月17日
本棚登録日 : 2020年9月16日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする