快楽主義の哲学 (文春文庫 し 21-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (1996年2月9日発売)
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本棚登録 : 2058
感想 : 162
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軽妙で面白い箇所がありつつも、全体としては退屈で読み進めるのに苦労しました。
中盤あたりで真面目に読む本ではないなと思ったのですが、もっと早く気付くべきでした。

頽廃や耽美を掲げ、エスタブリッシュドなお堅い思想を嘲笑していくスタイルで論談が展開されていきます。これはなかなか刺激的で新鮮でした。
一方で、本書でいう快楽主義が今日に至るまで流行らなかったのは、それがお堅い思想に抑圧されてきたからではなくただ相手にされなかっただけ、と節々で感じてしまいました。全体にわたって、快楽主義自体の脆さをその中身の軽薄さでなんとか言い訳しているような印象を受けました。
快楽主義的な生き方が現代で通用するかと問われると、それもまた難しいような気がします。右向け右の時代ならまだしも、多様性が称揚される社会ではかえって窮屈で不自由な生き方になりそうです。

どうやら大衆のウケを狙った著作で、ファンからすれば澁澤龍彦らしさを欠いているらしいです。私は初めて彼の著作に触れたのですが、もう澁澤龍彦はいいかなと思ってしまいました。
ただ、浅羽通明さんの書評は本書のアウトラインと読後のモヤモヤを見事なまでに整理して言語化してくれました。なんならこの書評が本書で一番面白かったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年5月1日
読了日 : 2022年5月1日
本棚登録日 : 2022年5月1日

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