東野圭吾さんの大作。
20年以上前の作品だが作者の100を越える著書の中でこの作品を一位にあげる人が多いのが頷ける作品だと感じた。
とにかく850頁を越える膨大な作品で、その分内容が濃いのだが、主人公である雪穂と亮司の二人の本人達からの心情や心理描写はほぼほぼ無い。物語の進行中も二人の事実上の接点は見えるにせよその描写は一切無い。
事件や問題が存在し、それが他の登場人物の目線や推測からこの二人の人物像が作られている。あまり読んだことのない切り口の物語。なので読者も色々な解釈ができるし、それが物語と二人の人物像の奥深さになっている。
雪穂が襲われた美佳にしたように、幼なき亮司が幼き雪穂の心の解放をしたのだろうと推測できる。もっといえば雪穂は亮司にしか真の心を開けない。
元々二人は大人の被害者である。
そしてその二人の関係性は恋人でも友情でも信頼でもなく精神上の強力な依存になったのだろうと感じた。その過去のトラウマからの依存的な二人の関係は、年を重ねる毎に形を変えながら加速していくようにも見えた。
その精神的な依存が根本にあるから見境なく罪を重ねられる、演技もできる、嘘もつける、動揺もしない、揺るがない。
その過程を作品タイトル「白夜行」と平行させている作者のセンスが凄い。
場面場面で考察すればキリがないので省略するが、一場面で数通りかの心理が読み取れ、それが数パターンの推測に繋がる。どう読み取っていいのか?果たして自分の解釈があっているのかもわからない場面もある。
雪穂は悪女にも見えるが逆にも見える。
亮司も悪党にも見えるが逆にも見える。
凄く文学的で、かつ最高のミステリーだと感じた。何度も書かせてもらうが濃くて奥深い。
- 感想投稿日 : 2023年9月26日
- 読了日 : 2023年9月26日
- 本棚登録日 : 2023年9月13日
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