自分にとって初の宮部みゆきさんの作品。かなり前からいつかは読む作品と心に決めていてやっと手にとった。
30年前の名作中の名作という前情報とミステリーの先駆け的な作品であることも相まって、読む前から身構える様な、高い壁を目の前にした様な心境でずっと後回しにしてきてしまった作品。
まずタイトル。こちらの作品は「火車」という漢字でずっとインプットされており読みは「ひぐるま」だと思っていた。「かしゃ」という読みだとは思ってもみなかった。
知識不足がタイトルから早速と始まった作品だった。
作品は本当に細かく丁寧に状況と心情が描かれており登場人物の輪郭がかなりはっきりと伝わってくる。
その集大成の様な約700頁の大作だった。
宮部さんの作品で今後も読みたいと思っている物はどれも長編で、今回この「火車」を読んでみて納得した。細かく丁寧に描写すればするほど文量は多くなるに決まっている。
宮部さんの作風であり、イコールそれは文量を伴う物であるのだと理解。
この作品の名作たる格付けはやはり最後の喫茶店に集約されている。
本間俊介の目の前にずっと追い求めた喬子が初めて姿を現し、その瞬間を描ききるがために長い前振りがいきてくる。その後どうなったかは描かれていない、しかしその後は読者の想像にお任せします、といった類いの終わり方とも違うと感じた。
待ち伏せた喫茶店に喬子が現れたその場所が
「火車の今日は我が門を遣り過ぎて哀れ何処へ巡りゆくらむ」
の終着点だと解釈。
巡って巡って本間と喬子が巡りあうその時こそがこの物語のラストに相応しいと。
素晴らしい、ミステリーではあるが謎や真相を残しつつもしっかりとした結末が名作たる所以だと感じた。
今後も気合いを入れながら宮部さんの作品を読んでいきたい。
- 感想投稿日 : 2024年3月25日
- 読了日 : 2024年3月25日
- 本棚登録日 : 2024年3月19日
みんなの感想をみる