フォークナー短編集 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1955年12月19日発売)
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感想 : 56
4

『嫉妬』
夫のことを「年上の男」と訳しているところが読みづらい。
嫉妬で狂ってしまう気持ちは共感できる。

『赤い葉』
首長が死んだ時に、一緒に遣えた者も死なないといけない理不尽さをそのまま描くことで強烈な皮肉になっていた。
黒人を奴隷として扱っていた悲しい歴史を初めて自分の中でリアリティーを持ってイメージできた。

『エミリーにバラを』
エミリーのホーマー・バロンに対する愛が最後の一行で分かり、生々しく美しい話だと感じた。また、彼女の父親の死体も同じように扱っていたこともそこで分かり、切なかった。
大切な人の死を受け入れることは耐え難く苦しいが、死体と過ごすことで彼女はゆっくりと死を乗り越えたのだろうなと思う。

『あの夕陽』
ナンシーが執拗にジーズアスを怖がり続けているのが終始不気味だった。この短編でも黒人が蔑視されている表現が各所に見られ、それが当たり前かのように描かれていた。

『乾燥の九月』
黒人だから悪いことをしたのだろうという差別的な論理が当時働いていたことがよく分かる短編。そのなかでも理容師は黒人の味方をしている。しかし、周りの白人からは白い目で見られてしまう。集団バイアスの怖さを思い知った。

『孫むすめ』
とにかく難読だった。方言が短編全体の不気味さを後押ししていた。戦争に行った者、行かなかった者の溝はどこの国にもあることを知った。

『バーベナの香り』
殺しの連鎖を止めた子供の話。殺しを止めたことで周りから非難の目で見られ、女性からも見放される。それでもその非難に打ち克ち自分の意志を貫いたベイアードはヒーローだと思った。このフォークナーの短編で度々描かれる黒人差別などの負の思想の連鎖を止めるにはベイアードのような勇気が必要になることをこの物語で知った。

『納屋は燃える』
家庭内暴力の残忍さは場所、時代を問わず恐ろしいものだと思った。真実と自分の身の安全とで揺れる子供が可哀想に思えた。

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感想投稿日 : 2020年12月29日
本棚登録日 : 2020年12月25日

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