「毒親」の正体 ――精神科医の診察室から ((新潮新書))

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  • 新潮社 (2018年3月15日発売)
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借りたもの。
毒親の原因に発達障害と愛着障害(スタイル)があることを指摘。
前者が脳機能の偏向、後者が生育環境における親とのコミュニケーションの問題とされている。
この2つはよく似た傾向を示すため、素人目には判断が難しそうだ。
(脳自体がブラックボックスのため、発達障害もよくわからないことが多そうだし…)

発達障害、愛着障害、精神障害によって何故、毒親が生まれるのか……
様々なクライアントのケースを基に、「毒親」の定義と原因を紐解いてゆく。
原因は1つだけではない。親の特質だけでなく、環境要因(貧困、カルト、嫁姑問題、DVなど)もあることを指摘。

親に原因があったことを認めた上で、“自分が”どうするのか……それが問題だ。
斎藤学『「毒親」の子どもたちへ』( https://booklog.jp/item/1/4895958744 )でも指摘があった。
子供は“親に無償に愛されたい”というのは普遍だろう。必要な時期にそれを得られなかった「事実」と「原因」を認識し、それを癒す――克服する――ことが「毒親」問題の本質だろう。
「毒親」認定をして親を断罪しても意味がない。むしろ「毒親」にその自覚は皆無であることが殆どだ。責めたところで「無かったこと(無視)」にされる。
そのことを“受け入れる”必要がある。
……この本では、毒親と認識された親にその「非」を認めることを促しているが。

この本は心に不安を抱える人に寄り添う姿勢で書かれている。だからと言って甘い言葉を論(あげつら)っているのではない。そこに好感が持てた。

段階を踏んだ克服法についても言及。
田房永子『母がしんどい』( https://booklog.jp/item/1/404602884X )にあるような、親と縁を切る以外の方法を提案。
……実際、私もカウンセラーと親子面談をして初めて親が私を育ててくれたが“見ていない”ことを認識した。

毒親問題とは、当事者が受けた、その虐待の程度や家庭環境の優劣(中産家庭か貧困家庭か)など、境遇の度合いが問題ではなく、家庭環境に起因した苦しい考え方のクセ――生きづらさ――による苦しみだった。それを他人が「被害者意識強い」というのはお門違いだろう。

【感想とはあまり関係ない備忘録】
日本において「毒親」という言葉の認知を広めた田房永子氏も、ブログで“「しんどい母は発達障害ではないか?」という意見を頂いた”と言っていた。
愛着障害は直近で読んだ『話を聞きたがらない夫 悩みを聞いてほしい妻』( https://booklog.jp/item/1/4040693841 )の著者・岡田尊司氏の専売特許ではないことが発見…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 心理学 / 精神医学
感想投稿日 : 2019年6月14日
読了日 : 2019年6月14日
本棚登録日 : 2019年5月21日

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