かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)

  • 新潮社 (1967年9月27日発売)
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感想 : 106
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ドライブマイカーにて主人公の家福が演出していたので気になり、読了。直前にバルザックの「ゴリオ爺さん」を読んでパリの豪華絢爛な空気に当てられたが本作は本作で非常にロシア的。イメージは常に黒い風の吹き荒ぶ冬。トレープレフもワーニャも結局は「なれたはずの自分」の幻想と自分のギャップに苦しみ続けた生涯だった。ドフトエフスキーにもショーペンハウエルにもなりたいと願わなかったソーニャが一番幸せなのだろう。

かもめ
ワーニャ伯父さん目当てで読み始めたが純粋な脚本の筋として観てみたくなったのはこちら。
人生は一度きりだからと夢を信じて、突き進んだ若人たちが脆くも破れ去る様子をトレープレフとニーナ両面から描いた作品。ニーナは役者としても鳴かず飛ばず、トリゴーリンにも捨てられてと踏んだり蹴ったり。一方、トレープレフは文筆家としてはある程度成功しつつあると言うのもポイント。自身の成功の程ではなく、理想との隔たりで不幸を感じてしまうトレープレフの感受性の鋭さこそが彼のかかった死に至る病なのだろう。

ワーニャ伯父さん
ウォッカと噂話でしか時間をつぶせないロシア農村部の土臭い質感がありありと浮かんだ。
確固たるミッションに向けて邁進する人生を歩んでいようが、無目的にただ日々を空費する人生だろうが平等に時間は進んでいく。死が救いになるほどの惨憺たる人生をそれでも歩んでいかなければならない。
かもめほどの劇的なラストではないからこそ、よりリアルな人生を描いていると言える。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年2月6日
読了日 : 2022年2月6日
本棚登録日 : 2021年9月14日

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