表題作を含む、5つの短編が入っています。
表題作「不自由な心」は中編と言ってもいいくらいの長さかな。
どれもこれも、浮気男の話です。
しかも浮気をあんまり悪いことと思っておらず、「まぁ誰でもこの程度のことはやってる」みたいな男たち。
最後の「不自由な心」は、主人公の男が、自分も浮気ばっかりしてるくせに、妹の夫が他の女とデキて、離婚しようとするのを責める。
心が離れているのに、義務感で一緒にいるのが大人の男のすることなのか?
何もかも捨てて、本当に好きな女のもとに行こうと思うのは世間知らずなバカ男なのか?
…っていう話なのかなぁと思ったけど、もうちょっと深い物語のようだ。
主人公の男の妻はかつて、夫の浮気がもとで半狂乱になり(?)自ら命を絶つような行動をとった。
結局死に切れず、重い後遺症を背負うことになる。
人は、自分の死よりも、愛する人を失うことのほうが怖いはずだ。
愛を失うのが怖くて、自分の命を絶つことで相手の中に自分を永遠に生きさせようとする行為は、たとえ自分の浮気が原因でそんなことになったとしても、彼にはどうしても許せない行為に思えた。
愛と死を描く白石一文の他の作品にも通じる、なかなか深いストーリーだと思った。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年9月17日
- 読了日 : 2012年4月8日
- 本棚登録日 : 2021年9月17日
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