前科のある女性二人の日常を描いた話。
真面目に生きる二人の会話がほのぼのと弾んで面白く、ずっと見ていたい気持ちになる一方、切なくて考えさせられる話でもある。
罪を犯したこと、刑務所にいたという過去が、彼女たちに暗い影を落としているのは無理もないと思う。
最後の章は辛かった。
主人公芭子(はこ)の家族関係が明かされる。
22歳で罪(ホストに貢ぐため昏睡強盗罪)を犯し、7年間の服役生活の中で家族は一度も面会に来なかった。三歳下の弟の結婚を機に、分籍、相続人廃除の手続きをさせられる。家柄、血筋、世間体が何よりも大事な、優しさの欠片もない冷たい家族なのだ。
芭子が言っている。
「私だって好きで罪を犯したわけじゃない。ただ人を好きになる方法を間違えただけ。お母さんは一度だって誰かを好きになった時のことを教えてくれなかった。私はいつだって、独りぼっちで苦しんできた。母親ならこんな時にこそ大丈夫、安心しなさいとどうして迎え入れてくれようとはしてくれないの」
芭子がこの冷たい家庭の犠牲者のような気がしてならない。
(その他)
乃南アサさんは、本書でも他作品でも、登場人物にあだ名をつけるのがうまい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学:作者な行
- 感想投稿日 : 2022年4月13日
- 読了日 : 2022年4月13日
- 本棚登録日 : 2022年4月13日
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