悪い奴じゃない、でも、良い人にもなれなかった…。安岡章太郎の小説っていうのは、そういうどっちつかずの人間の悩みが描かれている。さて、そういう半端な人間の王様といえば、やっぱり童貞だ。ここに収録された主人公達も実は皆童貞だ。ものすごく童貞について悩んでる。この本は「童貞傑作選」と呼んでも過言ではない。
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それはさておき、中でも安岡は「家族」のうまくいかない感じにわりとこだわっている。この問題、古く見えるかもしれないけれど、全然古くないと思う。と言うのは、確かに父権性とか家族主義っていうのは、昔に較べたらゆるくなってきた。だけど心のどこかで「でもやっぱりおれ家族の中で育ったんだよ」っていう気持ちが、まだどこかに残っている。安岡はそれから逃げれなかった。古くさい家族主義から逃れられずにいる苦しみ。たとえば母親を嫌いつつも、母から離れられない。二人は父を共に嫌うことで、蔭で手を組んでいる…。安岡はやっぱり、微妙な関係を描くのがうまいのだ。
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(ただし私小説作家共通の欠点か、たいしたことないのをウジウジ悩みすぎる、という傾向はやはりあるかもしれない。そういうのが苦手な人は、読むのが辛いか)(けー)
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- 感想投稿日 : 2005年1月11日
- 本棚登録日 : 2005年1月11日
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