・朝井リョウの作品は思わず目を覆いたくなるような場面をありありとリアルに描写するところが生々しくて好きだ。
そしてそれはスケールの大きいものではなく、誰もが日常的に感じたことのある、身近な場面や欲望だったりするからより自分に肉薄して感じるものがある。
・日常の何でもない場面の切り取り方や、言動や所作の比喩の方法がとんでもなくうまく、よくある場面だけれどまだ誰も言語化していない新しいものに感じさせる。
・緊張感の煽り方がうまい。読んでいて自分の中でホラー映画の今にも怖いものが飛び出る時の音楽が鳴り響いているかのような音楽や心臓の高鳴りを覚える。
○スペードの3
・自分のささやかなプライドを保ってくれるものを少しずつ侵されていく怖さと焦燥感の煽り方がうまい。
・中盤のどんでん返しも綺麗で驚きがある。
○ハートの2
・行間が広い。醜いと言われた明元むつ美がスペードの3に出てくるほどの美しい女性になることがわかっているから、学生時代の決断や行動に説得力が出る。こうして他人のためではなく、自分のために欲を出すことを恐れなくなって大きく変わっていったのだということがわかる。
○ダイヤのエース
・3つの物語の中で一番刺さった。
・何不自由ないことがコンプレックスになることもある。そう考えると自分の不幸な状況にそっと手を差し出してくれるような気がした。
・誰をも魅了してしまう人間って一定数いて、その中でも苦悩があるし、努力もしている。憎んでいる人のそういう姿を見て上手に憎めなくなるというのがこの物語で一番好きだった。
- 感想投稿日 : 2024年3月14日
- 読了日 : 2024年3月14日
- 本棚登録日 : 2024年3月14日
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