夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

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  • 文藝春秋 (2010年9月29日発売)
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村上は言う。
「僕自身、大学を出てからずっと、どこにも属さず、個人として生きてきました。就職もしなかったし、どのような組織にも属さなかった。日本社会でそうやって生きていくというのは、決して簡単なことではありません。どんな会社に勤めていて、どんな組織に属しているかで、人は評価されるところがあるからです。一般の日本人にとっては、それはとても大きな意味を持つ問題です。そういう意味では、僕は自分をずっとアウトサイダーみたいに感じてきました。」

どこかに属し、そこにやりがいを見いだす、という生き方の人間が、世の9割だと思う。どこにも属さずに自由に孤高に生きたくても、それは叶わないのが実情だ。
そんな大多数の、組織で働く日本人の中の一人である私は、村上春樹の生き方は憧れである。しかしまた、村上小説の魅力のうちなにか欠けているところがあるとしたら、どこにも属した経験がないことからくる、深みのなさでは、とも思う。
半分やっかみも入っているかもしれないけれど、組織でもがくことを放棄して自らの中に引きこもって作った小説であるから、なにか表面的な孤独、表面的な感動であると言いたくなることがある。
1Q83を読んで、なにか腑に落ちないような感じがしたのは、そういうことだったのかもしれない。

規則正しい生活を続け、確固としたスタイルを築き上げたそのブレのなさを、尊敬してやまないのだけれども。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 村上春樹
感想投稿日 : 2011年11月6日
読了日 : 2011年11月6日
本棚登録日 : 2011年11月6日

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