ローマ人の物語〈10〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(下) (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2004年8月30日発売)
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三頭政治の一角を担うクラッススがオリエントで戦死し、カエサルにとっては困難が、元老院にとっては好機が訪れる。元老院によるポンペイウス懐柔も成され、カエサルはいよいよ窮地に陥る…はずなのだが、カエサルと元老院とでは訳者が違い過ぎるのか、著者の塩野氏がカエサル贔屓だからか、あまり「絶体絶命の危機」という感は無い。史実を知っている身としては、ここからどうやって不利な状況をひっくり返していけたのか、という強い好奇心を感じられる巻になっている。

この巻でガリア戦役は終結。降伏したガリア人たちに対し、カエサルはガリアの諸民族を虐殺せず、本拠地となっていた各地の町を破壊したりもしていない。これが結果的にガリア人(ケルト人)の文化を生き残らせることになり、当時の町が今もヨーロッパ各地に存続するきっかけになったらしい。ケルト文化が無ければ今のイギリスやフランスの文明は存在しないわけで、政敵を壊滅させることが必ずしもいい結果を生むわけではない、というのが、この例だけとってもよくわかる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・宗教・民族
感想投稿日 : 2021年12月29日
読了日 : 2021年12月29日
本棚登録日 : 2021年12月29日

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