シリーズのようだが、本作しか読んでおらず、著者の他の作品も読んでいない。そのうえで次のような感想を持った。
謎解きは暇つぶしレベルでも、人情話との掛け算でわりに読ませる。こんなふうにサクッと読める短編を無性に欲するときがあるので、この作品この作者に出会えてよかった。と、途中までは思った。最後の一章の結末が到底受け入れられない。あの倫理観を成就させるために、あえて90年代設定(刊行当時ですでに20年前)にしたのかと勘ぐりたくなる。いや、その当時でもこれははたしてオーケーだったのだろうか。美談としていることがなおさら気持ち悪い。読み進めるごとに強くなっていった主人公への好感、作者への信頼がガラガラと崩れてしまうのは悲しかった。
2023年6月30日
- 古森のひみつ (岩波少年文庫 617)
- ディーノ・ブッツァーティ
- 岩波書店 / 2016年6月17日発売
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自分自身の子ども時代はいつ終わったんだろう?と考えずにはいられない。できればどこかに残っていてほしいと思う。そして、自分の影に愛想をつかれるような生き方はしたくないなあ。よかったね、大佐。
2017年9月24日
- あなたまかせのお話 (短篇小説の快楽)
- レーモン・クノー
- 国書刊行会 / 2008年10月1日発売
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どうしてこんなにブンガクっておもしろいんだろう!
(2010.05.27)
2010年5月29日
- 最後の瞬間のすごく大きな変化 (文春文庫)
- グレイス・ペイリー
- 文藝春秋 / 2005年7月8日発売
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ブコウスキーばりの、暴力的なほどに力強い文章。その目は優しい。
(2010.05.26)
2010年5月29日
- 舞踏会へ向かう三人の農夫
- リチャード・パワーズ
- みすず書房 / 2000年4月14日発売
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ぬかるんだ五月のいなか道を、三人の男たちが歩いていく。振り向いた彼らの視線がとらえたのは・・・
オーストリアの写真家、アウグスト・ザンダーの一枚の写真にインスパイアされたパワーズの想像力。20世紀という途方もなく混沌とした時代を問い直す。
私の20世紀は16のときに終わりを迎えた。14のとき、恐怖の大王がやって来るといって来なかった失望感を抱いたままだった。それ以来、どうも20世紀という時代が終わっていない気がする。
この本を開いて数ページで「読まれなければならない」本だと気づいた。なぜなら、この本が「我々の」物語だから。
(2010.05.21)
2010年5月23日