科学者サー・クロード・エイモリーは、ポアロに国家機密の化学式を国防省の役人に手渡す役目をお願いする。頼みを引き受けたポアロは彼の屋敷へと向かうが、到着前に書類が屋敷の住人の誰かに盗まれてしまう。部屋を暗くしている間に書類を戻すよう皆に伝えたサー・クロード・エイモリーだが、明かりがついたとき彼は息絶えていた。
犯人は誰か。そして化学式の行方は。
ポアロ長編を読み進めてきて、いよいよラストの『カーテン』を残すのみ、と思っていたら、この本が刊行されていた。戯曲の小説化なので、戯曲で読もうか、と迷った末結局読んだのだが、やはり戯曲で読むべきだった。
まず、文章がぎこちなく説明的なのである。あれ、と思ってあとがきを見ると、なんと小説版はクリスティ研究家が書いた、とあるではないか。せっかく親友ヘイスティングズも登場するのに、妙に言動が堅苦しく、おちゃめな魅力も半減である。
ミステリとしても、別の作品と同じトリックが使われており、あまり驚きはない。うーん、これは戯曲で読んだ方がよい。さらに良いのは演劇を観ることなのだろうが、なかなかそれは望めない。
とはいえ、長編の中では短めでさくっと読めるので、『カーテン』を読む前の軽い助走ということで良しとしよう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
アガサ・クリスティー
- 感想投稿日 : 2021年9月26日
- 読了日 : 2021年9月21日
- 本棚登録日 : 2021年9月26日
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