Yの悲劇 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2010年9月25日発売)
4.01
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本棚登録 : 1208
感想 : 88
4

☆4.2

前作よりドルリー・レーンがどんな人物なのかが少しだけわかった今作。
探偵の苦悩を彼がどのように乗り越えたのか、そしてこの先のレーンがどんな探偵であるのかを見届けなければと強く思った。

世間での悪評の多い一族は、物語に因んで"マッド・ハッター"一族と呼ばれている。
このハッター一族に悲劇が襲いかかる。
最初はヨーク・ハッターの自殺と思われる腐乱死体が発見されたこと。
その次は三重苦を背負うルイーザを狙ったと思われる毒殺未遂事件。
ついには老女傑エミリー・ハッターがマンドリンで撲殺されてしまうなど事件が続く。
サム警視はこの難事件を解決するため、ドルリー・レーンの協力を得るべく彼の元を訪れた。
しかしこの事件は、このレーンをも深く苦悩させる事件として彼らの前に立ちはだかることになるのだ。

前作でもそうだったが、相変わらず目の前にある事実をありのままに認識し、事実を導き出す手腕がお見事。
いつもレーンの説明になるほどなるほど、と納得してしまう。
どこか奇妙なちぐはぐさや、収まりの悪い気持ち悪さがあったのに、それらが理解できるものに変わる経験はやはり心地よい。

今作の私的な一番の衝撃は、もちろんラスト。
ちょっとすぐには受け止めきれなくてもう一周読んでしまった。
そういうことですよね?と誰にとも無く確認してしまう。
レーンさん、やってしまいましたよね?

ドルリー・レーンという人は、本当にブレない人だと思う。
そして、実はあまりにも独善的な人なのでは。
『Xの悲劇』の時には、心の強固なところが強みだな、なんて思っていたのに、今回とてもとても苦悩していた。
それは、ブレないがための苦悩だったように思う。
信じられないような、あり得ないような犯人だったとしても真実は真実、と割り切る苦悩も確かにあっただろうけれど、本当のところで苦悩したのは、手を下すかどうか、というところだったんじゃないだろうか。

ちょっとこれ四部作全部読むまで落ち着けなくなってきた。
はよ、はよ、読まな……

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外ミステリ
感想投稿日 : 2023年4月30日
読了日 : 2023年4月28日
本棚登録日 : 2023年4月28日

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