こよなく魂が憩う本でした。
小説家辻邦生氏と銅版画家山本容子さんとのコラボレーション。
山茶花、アネモネ、すみれ、
ライラック、クレマチス、紫陽花、
百合、向日葵、まつむし草、
萩、猿捕茨、クリスマス・ローズ
ひとつひとつの花を短編にしたてて。
それぞれの花の銅版画もあって。
ちょっと「ジュニア ソレイユ」の挿絵入りの小説を思い出した。
吉屋信子氏の「花物語」は私の時代でないけれど、きっと思い出す人がいる。
奥付をみると「挿花」という雑誌が初出だから。
でも、辻氏のこの短篇には気品がありました。画に花の香りがしました。
私の好みは物語では「紫陽花」「向日葵」画では「すみれ」「まつむし草」。
「紫陽花」
紫陽花をとめどなく好きな母に育てられたヒロイン。
『眼をつぶると、いつも雨に濡れた紫陽花が見える。』
そして、『その花影に誰か男の人がいるように』...実在のひと?亡くなったといわれた父?
鎌倉の紫陽花寺でデジャヴュを感じ、一緒に来ていた研究室の先輩が、人影その人になり恋を感じ結ばれる。
白い結婚衣裳を直してくれる母の手、『私はふと、実は私が母であり、自分の娘に』私が直してると感じた。
母と娘の空想的な理想というか、本当にそうかもしれないと感動してしまった(涙)
「まつむし草」の版画がとても可愛いんですよ。
花のひとつひとつがバレエのチュチュで、踊っているよう。
今度花に会ったら、そう思って見てしまいますね。この絵がほしい!
- 感想投稿日 : 2021年9月16日
- 読了日 : 2004年2月24日
- 本棚登録日 : 2021年9月16日
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