夜の記憶 (文春文庫 ク 6-10)

  • 文藝春秋 (2000年5月1日発売)
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本棚登録 : 312
感想 : 32
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米原万理の「打ちのめされるような小説」に丸谷才一の「笹まくら」と比較され、気の毒くなくらいきめが粗いと評されてしまっているのだから、私がまた、日影丈吉の『女の家』とくらべてしまうのは筋違いかもしれない。

『女の家』のしっとりとした、それでいて人間の暗い部分、記憶のおぞましさの恐さが迫ってくるのにはかなわない。

たまたま続けて読んだ私のせいかもしれない。

ミステリー作家の少年時代の過酷な経験と作家自身の作品とまた別件、50年前の少女殺害事件の謎が交互に記されていくそのストーリーは、それなりに夢中に読ませるのだけれど、過去と現在を交錯させる手法に頼りすぎているのかと思う。

解説によると、薄皮をはぐようなサスペンスと読み応えのあるトマス・H・クックの作品は、次作「心の砕ける音」だそう。いつか読もう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2006年
感想投稿日 : 2021年9月8日
読了日 : 2006年11月18日
本棚登録日 : 2021年9月8日

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