地獄変

著者 :
  • 2012年9月27日発売
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感想 : 56
4

色んなコトが曖昧で、沢山の解釈の仕方がありそうでそこが難しいしとても面白かった。


読み終わって色々考えた。
私なりの地獄変の解釈は今のところこんな感じって事残しておこうかな。
まず、この語り手が大殿様について言ってる事ほぼ嘘…というか捻じ曲げてると思う。この人所謂暴君じゃん。この話も大殿様賛美に満ちてるように語ってるけど、分かりにくい内部告発じゃない?

良秀は俗世じゃなくて芸術に生きている故に周りから浮いていたかもしれないけど、天才ゆえの孤独というか"理解されない"人だった。
狐憑きとか神憑り的な事って芸術家にはままあるよね?ゾーンに入ると作品以外は意識の外になる。そういうのは狂気というか病気みたいなもので本人にはどうしようもない。
でもそれって決して芸術に魂を売ったとかじゃなくて、単にその人の一面なの。家族や弟子を蔑ろにするのは愛がないからじゃなくて、芸術に対する比重が大き過ぎて隠れてしまうだけ。
この語り手が言う程ヤバい人じゃないと思うなぁ良秀。あ、わざとか?大殿様を正当化するために。

地獄を見ないと描ききる事ができなかった地獄変。
だから、愛する娘が目の前で焼き殺されるという地獄を見た事で完成させられた。
大殿様は良秀に地獄変を書かせようと思った時点で良秀が地獄を見ることになるのは分かってたんだろうな。むしろ地獄を見せてやろうと思って命じたんでしょう。それは、良秀にも分かった。
だからうなされ、泣きながら描いた。
何が起こるか心の底では分かっていながら「美しい女が乗った牛車が燃えるところが見たい」と大殿様に言った。
小猿の良秀は、画家の良秀の分身でしょう。
人間の部分。良心というか。
だから、小猿が娘と一緒に焼け死んだ瞬間、芸術家としての面しかなくなってゾーンに入った。これで描けるぞ!地獄を!
その人間を捨てた姿は最早神の域ってことかな。

地獄変を完成させて自ら命を絶った良秀。
良秀は自分が描いた地獄変に何を見たんでしょうね?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年2月2日
読了日 : 2022年2月2日
本棚登録日 : 2022年1月31日

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