ひとが壊れる話ふたつ。
「ツルゲーネフを読む声」
各エピソードに新味はなく思い入れられるキャラは誰もいない。なのにどうしてこんなに読ませるのか。文芸。
正直トレヴァーの長編ロマンスに出てくる男は非力でやさしいだけなので苦手なのだが、肝はヒロインがどうやって不幸な恋を取り扱うかなので、男は刺身のツマのようなものなのかもしれない。
「ウンブリアのわたしの家」
一話目で十分にやられたので、おまけ気分で読み始めたのだけれど、実はこちらのほうが鉈で殴られるような攻撃力のある話で、すっかりうちのめされてしまった。
途中から感じ始める、主人公に対する「この人大丈夫かな?」という気分。でも彼女は何年もたってから、なんのいいわけもなしにあの時間を語りきっているわけで、これはものすごい強さなのか狂いなのか、区別はつかない。
誰でも自分の人生を物語にする。「わたしの人生はこういうものであった、その結果いまのわたしはこのようにある」という物語。それがまちがっていたとしても、ないと立っていられない。わたしの物語が彼女のもののようでないなんてとてもいえない。「あの人大丈夫かな?」と思われずに済めばいいけれど、これは自分では絶対わからないのだ。
そういえば、2話とも、お金があれば狂ってもなんとかなるという話だった気がする。つらい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
英米 - 小説/物語
- 感想投稿日 : 2017年12月11日
- 読了日 : 2017年12月9日
- 本棚登録日 : 2017年12月11日
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