世界文学の名作は様々な読み方ができるもので、本作もいろんな思いが去来するが、資本主義の下で人間がゴミのように扱われる様は時代を超えた迫力をもって迫る。ジョード一家のように何の救いもない状況に陥った人々もいただろうし、絶望的な状況を逞しく生き抜いた人々もいただろう。敬意と哀悼を感じる。
ふと感じたのは、現代の我々がもしこうした状況に追い込まれたとき怒りの葡萄を心に持つことはできるだろうかということ。平和ボケの軟弱な精神を持つ我々現代人は、分かりやすい異分子や弱者を捌け口として怒りをぶつける悪癖を共有しているが、強大なシステムが我々を押しつぶそうとしたときに、正しい怒りというか、その理不尽さに怒り闘うことができるだろうか?安易に迎合してシステムの下層に組み込まれることを拒否できるだろうか?
そのように自問した作品であった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
世界文学
- 感想投稿日 : 2021年1月16日
- 読了日 : 2021年1月16日
- 本棚登録日 : 2021年1月16日
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