「文学――それは絵である。つまり、一種の絵であり鏡である。情熱の表現であり、きわめて鋭い批評であり、道徳に対する教訓であり、同時にまた人生の記録である。」
ドストエフスキーの処女作。
貧しい環境にいる人々の生活と苦悩を描き出す。
荒削りの印象はあるが、人間の喪失と再生を、書簡形式の老人と少女のやり取りを通して描写するあたりは、さすがドストエフスキーと言ったところなのかもしれない。
この作品のテーマは、「貧しさに生きる人々の深い闇と差し込む一筋の光」だと感じた。
環境による不平等を持つ老人と少女。
しかし、やりとりを読んでいると、どこか読み手にイライラさせる要素があることに気づく。
それはどこから来るのか。
彼らだって自分の選択で、病気や低い役職、他人からの執拗な嫌がらせを受けているわけではない。
それでも生きていく、。一人ではなくお互い支え合って生きていく二人。
一人では生きてはいけない、そう思う老人と少女の申し訳なさ、後ろめたさが読者のイライラの原因ではないだろうか。
それは彼ら二人の虚栄心、というよりは、人間としての尊厳の確保という意味合いが強いだろう。
「貧しさと恥は似ている」
余談だが、p85の老人が息子の死に直面した時の描写が半端ない。
これがドストエフスキーかと身震いした。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
文学
- 感想投稿日 : 2012年3月21日
- 読了日 : 2012年3月27日
- 本棚登録日 : 2012年3月21日
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