密会 (新潮文庫)

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感想 : 105
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●あらすじ
ある夏の未明、突然やって来た救急車が妻を連れ去った。男は妻を捜して病院に辿りつくが、彼の行動は逐一盗聴マイクによって監視されている……。二本のペニスを持つ馬人間、出自が試験管の秘書、溶骨症の少女、〈仮面女〉など奇怪な人物とのかかわりに困惑する男の姿を通じて、巨大な病院の迷路に息づく絶望的な愛と快楽の光景を描き、野心的構成で出口のない現代人の地獄を浮き彫りにする。
(新潮社HPより抜粋)

●感想
これは難解…なんだけと面白…!
安部公房はいつもそうだけど時間軸が前後する上に今作では一人称視点、三人称視点が入り乱れて読者を一瞬たりとも安心させない(あるいは一度安心させる)仕掛けが至るところにあります。
それにしてもなんて病院なんだ。不能克服の為に「馬」並の他人のペニスを得た副委員長。それに協力する病院関係者。試験管ベイビーの不感症。13歳の娼婦。被姦妄想の仮面女……。熱海秘宝館みたいな病院だわ。「患者」である人々はもう大体みんな性に関する悩み(疾患)を抱えていて、その状況はたいてい凄絶だけど悲壮感がなく、余計に狂気を感じる。その狂気パレード、怖い淫夢みたいな病院の中で唯一主人公の正気というか外界との繋がり、「外」を感じされるのが妻であり「妻を探す」という目的なんだけど、最終的にそれすら悪夢に取り込まれてしまう(と主人公は感じる)んですね。可哀想に。
主人公はこの悪夢からずっと疎外され続けている。結局患者にはなれないまま、「人間から遠ざかっていく」娘だかを抱きしめて孤独で優しい密会をする。
凄絶で静かで疾走感と余韻のあるラスト、破滅に向かって走る感覚、良かったです。それにしても安部公房、人嫌いなんかな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2023年8月23日
読了日 : 2023年8月23日
本棚登録日 : 2023年8月23日

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