三銃士 上 (岩波文庫 赤 533-8)

  • 岩波書店 (1970年10月16日発売)
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感想 : 52
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・よく知られた小説だが未読。そこで改めて読み始めた。

・時代は17世紀。フランス中西部ガスコーニュの地方貴族の青年ダルタニャンは立身出世を胸に秘め、パリに「上京」。三銃士ことアラミス、ポルトス、アトスら近衛銃士と出会う。ダルタニャンも護衛士に任官され。その後、近衛銃士に登用される。

・ところで、戦い場面では主に剣を使う彼らだがなぜに「銃士」なんだろう…とふしぎに思っていた。原題は、「LES TROIS MOUSQUETAIRES 」(レ・トロワ・ムスケテール) 。MOUSQUETはマスケット銃のことらしい。なのでマスケット銃兵のニュアンスのようだ。一義的に(そして用兵上は)マスケット銃兵で、併せて剣や短銃も装備していたらしい。だが、平時にパリの市中で常にマスケット銃を携行しているわけにゆかないようだ。そのため、小説中の彼らの小競り合いの場面では、いきなり銃を発砲するのでなく、まずは剣を突き合せている様子。小説としても、その方が麗しく華やかなのかもしれない。だがやはり用兵・身分上は「銃士」なので作品邦題は「銃士」として流布してきた模様だ。

・一方で、読み始める前の私の本作のイメージは、剣の使い手たちの剣闘、チャンバラの場面が多いのでは…、というものであった。
だが、上巻を読了して「モンテクリスト伯」に近い感じを受けた。剣闘はあまりなく、多くは謀略や奸計を描いているのだ。ちなみに「鼠落とし」という謀略も解説される。(ある男を逮捕しても、そのことを秘したままその住居に官憲を張り込ませ、気になった悪い仲間が次々に来訪するのを芋づる式に捕縛する手法だという)
「曰く「《鼠落し》(スリシエール)の発案されたのは、現代ではないのである。社会ができておよそ警察というものがつくられたと同時に、この張り込み所もすぐ生まれたのであった。」(第10章192頁)

その他、こんな場面が印象的だった。
・神職に「復帰」したいと願うアラミスが、司祭らと神学の論文指導をうける場面。ラテン語を交えた神学論争。その場に居合わせたダルタニャンはつぶやく。
気違い病院に来ているような気がした…。
作者大デュマの、そうした「神学論争」的なものに対する揶揄、批判精神を垣間見た気がした。少し意外の感もあった。
・アトスが、敵対勢力との小競り合いの際、宿屋の地下の酒倉に退避。そのまま10日近く籠城。そしてアトスはその酒倉の中で、150本近い葡萄酒を飲みまくっていた。腸詰50本も肴に平らげて。宿屋の主は涙目。痛快、且つ、あきれた場面で面白い。

※「三銃士」は1844年刊で、「モンテ・クリスト伯」は翌1845年の刊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外文学(古典)
感想投稿日 : 2022年5月28日
読了日 : 2022年5月25日
本棚登録日 : 2022年5月14日

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