三銃士 下 (岩波文庫 赤 533-9)

  • 岩波書店 (1970年10月16日発売)
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感想 : 35
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下巻を読了してもやはり「三銃士」こんなお話だったんだ…意外…という感である。ただし不満ではなく、予想を覆された喜びである。
そして、とにもかくにも悪女ミレディ―である。小説、ダルタニャンと三銃士の活躍と友情の物語だったな~という感想よりも、なんだか悪女ミレディーの強烈な存在感が印象に残る。
英仏の戦争、フランス南西部の港湾都市ラ・ロシェルの攻囲攻防戦を背景に、4人の銃士の戦闘も描かれた。だが、銃士らにとって最も手ごわい敵はミレディ―なのであった。悪女というより、もはや悪魔である。
とりわけ、ミレディ―が英国の城に囚われ、その「監獄」からの脱獄を図る条りがすごい。うぶな青年将校を一週間ほどかけて篭絡。美貌と虚言、芝居を駆使して少しづつ攻略してゆく。この部分、もはや独立したひとつの小説のようにも思える読み応えである。
 ※52章「囚われの第一日」~「囚われの五日目」、そして58章「脱出」まで、7章/約100頁に及ぶヴォリュームである。恐らく作者デュマ自身、この悪鬼ミレディ―の展開を夢中になって書き進めたように思われる。

これまで出会った文学上の数多の悪女のなかでも屈指の悪女、ファムファタルであるミレディ―。思わず、このブクログ本棚内に新タグ「ファムファタル」を新設したほどである。
ミレディ―が如何に悪女であるか。その経緯は込み入っているうえ、その悪行も多いので、詳述はあきらめる。
さて、そしてふと思い至る。
これほどの悪女ミレディ―だが、その意志と生き方の力強さにおいて、ある意味、独り立ちした女性像である。物語の舞台は17世紀だが、小説が書かれたのは1884年。19世紀である。輪郭が生まれつつあった近代的な女性像の反映なのかもしれない、と思うのであった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外文学(古典)
感想投稿日 : 2022年6月4日
読了日 : 2022年6月1日
本棚登録日 : 2022年5月14日

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